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スカウティングレポート

 大谷選手が104年ぶりの偉業達成!「二桁勝利・二桁ホームラン」ベーブルース以来である。ベーブルースの名前は子どもの頃から知っていたが、彼が有名になった理由を知らなかったのだが今回初めて知った次第である。元祖二刀流なのだ。
 そこで偉業を達成したオオタニサンの記事を読んでみると“彼はスカウティングレポートに縛られないで一人ひとりの打者に対して攻略法を考えているというような記事を読んだので、スカウティングってどういう意味かを調べてみると偵察とある。
 そこでscoutという言葉を調べると「斥候」とあるのでスカウティングレポートとは「斥候の報告」ということになる。軍隊の機能として斥候兵がおり、かれらが敵の状況や当軍隊がこれからキャンプする場所を先回りして調べるような機能を担う兵士の事なのだ。
 それを実際の戦争で少年たちが担ったのがボーイスカウトの始まりという事を知った次第だ。少年たちを大人の軍隊の中で機能させるにはその機能を担うに足る教育をする必要があり、規律やチームワークなど大人の軍人と同じような教育を受けたと言われている。

 私が小学生の頃、クラスにボーイスカウトのカブに入隊している子がいたM君と言ったその子はクラスで一番のお金持ちの子であったので、ボーイスカウトに入れる子はお金持ちの子でないと入れないのだと思った。比較的、家が近くにあった私は、休日などにカッコイイ制服を着たM君を街で見かけたものである。
 そのころはボーイスカウトではなく、ボーイスカートと理解していたので、何で男の子がスカートなのだろうと思ったのが最初の印象であった。今回、scoutの意味が分かったので彼がなぜそこに入隊させられたのは彼の家の教育方針に合致していたのだろうと思った。いわゆる団体生活の中でのルールを知り、自分の役割を知って、それを達成することやチームメイトへの思いやり・・・などを学ばせるためにかれをボーイスカウトに入隊させたのであろう?

 私は勝手に彼を親友と思っていたのでそれから60年後に同窓会で会えることを楽しみにしていた。年に一度の同窓会を3回重ねた頃に、幹事と思しき参加者になぜ?彼は同窓会に来ないのか?と訊いたら、トンデモナイ答えが返ってきた。
「彼は公立小学校の同窓会などには出席しない、私の同窓会は慶応のものだけだから!」と言われたという話をしてくれた。私は「へぇ・・・!」と絶句してしまった。
 何か前時代的な理屈だなと思ったが、そう言う人だった。私に言わせればとんでもない人格に育ったものだと思ったが「それも個性か?」と思ったが、小学校にあまりいい思いではないのだろうな?当人しかわからないような・・・?と考えた。
 かれが小学校で団体生活に馴染めなかったという気はしなかったが、そういえば友達は私以外に思い当たらなかった。そう考えるとかれの両親はそんな彼を団体生活になじませるためにボーイスカウトに入れたという気がしないではない。それにしてもあの当時そのような事を考えて子供のためにボーイスカウトに入れることを決断した両親がいたことに驚いた次第である。昭和30年前後の頃の話だからだ。
 
・彼は300人以上いた公立の小学校から慶應義塾の中等部に入った唯一の児童であった。
あの当時、女子は私のクラスから二人私立に入ったが男子は彼だけだった。それは目黒という土地柄だからだろうと思われる。学区に裕福な家が多いからである。まあ、その中でも特別な家の子が私立中学校に入ったのだ。ではクラスの3人が全て同窓会に来ないのかというとそうではなく2人の女子は常連なので慶應義塾に入った彼だけがこの小学校の同窓会には来ないのでよほど嫌な思い出があるのだろう。
 
 その後、かれの唯一のクラスメートである私は君と会いたいので出席してくれたら嬉しいというような手紙を書いたがそれ以来、年賀状は来るようになったが会うことはかわなかった。わたしは年賀状に私の近況などを書いて出したが彼の年賀状は常に印刷されたままの状態であった。そのうち、お互い喪中の葉書が続いたことで年賀状を3,4年出すことができなかった。彼のそっけない理由を考えるといくつかの理由が考えられた。
私は思うところがあっていろいろと想像を巡らして、それを短編小説に書いた。「70歳の同窓会」という小説である。興味ある方はkindle で読むことができる。私の発表している小説の中では一番プロっぽい部類に入る地味な小説の様な気がしている。

 たしかに何回か同窓会に出席していると顔ぶれが決まってくる。若い頃は担任の先生も出席したが私の年代になるとほぼ鬼籍に入られるか、遠方での会への出席は叶わなくなるので幹事が恩師のコメントなどを最初に報告することになる。しかしそのうちにそれもなくなる。これも恩師のスカウティングレポートになるのだろう。
                             2022年8月22日 T.I

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