ブランドワークス

Column

二つのバイブル

 今年になって真面目にBIBLEを読もうと思うようになった。
BIBLEの語源はギリシャ語のbookであるので単なる書物という意味だがそれがいつの間にか聖書を意味するようになったのにはいろいろな背景があるようだ。
 これは世界一のベストセラー本であると言われている。どんなホテルにも備え付けのホテルの部屋の机の引き出しを開けると聖書が置いてある。日本中のホテルの一室一室なのでその数だけでもベストセラーのロングセラーでもあろう。以前、麻布十番に通っていたころ道に迷い行き止まりの道に行きあたった時、そこに椅子が置いてあり、その上に数冊のたいそう立派な装丁の本が積まれてその前に自由にお持ちくださいとの張り紙が貼ってあった。ハードカバーのその本を広げてみると聖書であった。無料ならいいか?と聖書をいただいてこようと思ったがやめてしまった。あまり立派すぎて裏がありそうな気がしたからである。

 二つのバイブルについて説明するとその二つとは世界的なベストセラーのナンバー1とナンバー2と言われている。ナンバー1とはキリスト教の新約聖書、ナンバー2とはシャーロックホームズシリーズである。
 新約聖書は昔、さわり程度読んだくらいで止めてしまったが、今度はまず、きちんと4福音書から読んでいる。きっかけはK枢機卿から聞いた「マリアの神殿奉献」で新約聖書外典を読むにあたり、枢機卿が外典になった理由は読んでみればわかりますよ。と言われたので「ヤコブ原福音書」を読んだ後にルカによる福音書、マタイによる福音書と読み進んできた。読んでみて確かに外典になった理由が分かるというモノであった。外典はいわば大衆文学なのである。まあ、それだけに面白い内容であることは確かである。
私の場合、聖書を読むということは知識として必要だろうなと思っていたので良い機会を与えられたと思っている。
 読んでいてなるほどと思ったのはたとえば預かったお金を運用して預かった分と同じくらい利息を生んだ人は褒められるが、預かったお金を大事に地中にうずめた人は叱られて、お金を取り上げられる。理由は地中に埋めるなら銀行に預ければ利子がつくというのである。こんなことが聖書に書いてあるのだ。正直、この教えは何なのだろうか?ともかく、賢く生きよということなのか?金儲けをせよということなのか?間違いないことは今生きている社会でより良く生きるための知恵を授けることが聖書の目的なのである。そう言えばK枢機卿はかつて銀行家でもあった。
 いずれにしても聖書は現代社会の中で幸せに生きる知恵の宝庫であることは確かである。
仏教国の日本が銀行を作ったのは渋沢栄一が1873年に作った第一国立銀行である。それより1873年前にイスラエルには銀行があった。西洋社会は銀行が社会に益をもたらすことを見抜いていたことになる。そんな知の宝庫のバイブルを今さらと思うが読まないよりはましだろうということで読んでいる。

 もう一つのバイブルはシャーロックホームズシリーズである。これはそんなに大それたことではなく、そのバイブルの一遍でも原語で呼んでみようかと思ったのである。この聖書は半世紀近く前に丸善で買ったものである。それ以上にいいことはスマホがあればどこでも音読している原書を聴けるので50年前とは雲泥の環境でこのバイブルを読むことができるのだ。
そして「Scandal in Bohemia」を読み始めた。今度は長続きしそうである。ボヘミアのカールスバッドから遠くないEgriaにある製紙工場でつくられた便箋のホームズ宛ての手紙を手にしたかれはその地を言い当てるのだが、現在このボヘミアの地はチェコのカルロビバリという街である。首都のプラハよりドイツ国境に近く、大きな町としてライプツィヒがある。この時代のボヘミアはヨーロッパの主要な国々が蠢いているような時代なのである。この街をわれわれはグーグルマップで丹念に楽しむことができるのだ。このバイブルはこのような余禄がある点が魅力的である。50年前には考えられない楽しみ方である。
                            2024年1月22日T.I

Share on Facebook