ブランドワークス

Column

追跡者

 Chaserが意図した英訳のようである。グーグル翻訳ではTracker と出るので本当かと思って、愛用のConcise(新簡訳英和辞典)ではtrackerを調べると、項目すらなかった。
 調べるとtrackerとはどうもWed上で追跡、分析することからきているようでそう考えるとfugitiveに対する語としては不適当であることがわかった。
 ちなみに愛用のConciseは1955年岩崎民平さんが冒頭の挨拶文を書いているのでかれこれ70年前だ、あきらめてその代わりに現役で仕事をしていた際に会社のデスクに脇に置いてあった研究社の新英和中辞典をひくとは1994年の挨拶文が冒頭にあるくらいなのでtrackerの項目はあった。1994年ころは丁度、トラッキングという概念が専門家の中では出始めていたころかもしれない。辞書も来るべき時代に向けた新しい言葉を記載しないといけないのだろう。

 Chaser,チェイサーという語は自動車好きの人なら知っていると思われる、昔、トヨタのマークⅡの姉妹車として1977年に発売された自動車でその名の通り走り(・・)に徹したゴージャスな車であったらしいが、この場合のチェイサーは名うての走りに徹した自動車を追うことができる自動車という意味合いを込めたのではないか?とすると追われる車はどんな車なのであろうか?日本車ならGTR,外車ならポルシェ?いずれにしてもそんなイメージを想定して命名したのではないか。しかし、私の意図したチェイサーはずばり、追跡者のジェラード警部の方である。
 そもそもこのテーマで書こうとした理由である。ほぼ、10日くらい前に半世紀もの間、指名手配中の桐島聡という爆破犯が私の住まいの近くの総合病院で亡くなったというニュースゆえである。
そして50年近く逃げ回って、結局、我が家の全員がお世話になっている病院で亡くなったということと50年近く、すぐ隣の藤沢市で暮らしていたという事実に何とも言えない因果を感じた次第なのである。
というのはこの男が世に出るきっかけになったともいえる事件が起きた。1974年8月30日に東京丸の内の三菱重工業ビル玄関前に置かれた爆弾で8人が亡くなり、380名が重軽傷を負わせ、日本中を震撼させた事件の主犯格のテロリストである。
この事件が我が家に与えたショックは一時的だが大変なものであった。というのはこの爆弾が仕掛けられた三菱重工ビルの入り口付近にあるティールームで私の妹が働いていたからである。1974年といえば私がホンダに勤めて3年目の年であり、仕事中に社内に流れていたニュースから突然この事件を知った経緯があった。その事件のすさまじさは耳からしか入らない状況ではそのインパクトは分からない。ただ、丸の内の三菱重工のビルということから、もしかすると妹が仕事をしてビルなのではないかと一瞬、思った。
その夜、母が嫁ぎ先に電話をして無事であることか確認したのだが、後で話を聞くと、
その爆発で思ったことは地球に何か起きたのではないか?ということらしかったが、そのくらいの凄まじさらしかった。
つまり、桐島 聡は初めから終わりまで何となく我が家に関係があった人物なのであった。ただ、私はその逃亡者を直接追いかけるジェラード警部ではなかったが何とも奇縁を感じてしまう。
同じような奇縁を感じるのは例の世田谷一家殺人事件だろう。これに関しては容疑者の一人として私はリストに上がっていた。したがって、これを機に私の指紋やDNAは警視庁のファイルに今後まだ数年間は残るのではないかと思う。この事件はまだ未解決だ。
最近は我が家に刑事が来ることもなくなった。私は年末に必ずテレビから流れてくるこの事件を他人事のように眺めて、今年もあと、一日かと思うだけである。

余禄として、私はこの事件をテーマにした小説「北極のかなたへ」を書いた。手前みそだがこの本はスケールの大きい小説だ。そして、これは日本の警察機構の限界を書いて点で手前みそながら、いい作品と思っている。
ぜひ、ご一読のほどをkindle出版社の電子書籍なのですぐに購入可能です。
                             2024年2月19日

Share on Facebook