ブランドワークス

Column

改 訂 版

本考を元にした本を2015年に出版した。
「デザイン・マーケティング・ブランドの起源」というタイトルの本で自費出版というカタチでいわば私の職歴本という本ではあるが、単なる個人史本では意味がないと思い、その3つの分野を開いた人、いわゆる発明した人を3人特定し、その人物がどのようにしてその分野を作り出したかを解いた本である。
 出版社をつければなんとかなった気がしないではないが交渉が面倒だし、人生の節目としての記念出版のようなカタチにしたかった。ただ、出来たら書店に並べたいし、ISBNを取得して国会図書館に納めたいと思ったのでそれが可能になる出版社を選び、限定200冊を製本した。
また、この本は私の営業ツール、いわゆるブランドワークス研究所の営業パンフレットにもなるというような狙いもあった。新しいクライアントの仕事をする時には会社紹介と人物紹介の役割をも持ってもらうのである。
 このような職業においては自身が商品なので、実績の証が必要なのである。一般的な実績の証は具体的な仕事を紹介することになるのだが、これも守秘義務があるのでそれをあからさまに開示するわけにはいかず、暗示させる程度で押さえなければならない。まあ、要するに自分の実績と能力を正当に未来のクライアントに理解してもらうのが重要なのである。
 その点から言うとこの処女出版の本は少し,見劣りがするかもしれない。というのは意外と学究色が強い気がしたのである。というのは内容の4分の3はその道のパイオニアの人物史であるからだ。デザインのレイモンド・ローウィ、マーケティングのラルフ・ローレン、ブランドのチャールス・ワースという人の実績を通して、その人物が一つのビジネス分野を切り開いた歴史を書いているからである。
 その点からいうとともかく、歴史マニアと言うより何事も誰がその道を切り拓いたかについて知りたい自分自身の欲求に素直に従った本と言い得るであろう。今から考えるとそのようなことに価値を置くようになったのは、医術におけるヒポクラテス、歴史におけるトゥキュディデスのような本が価値ある本であるという自身の信念を処女作としたかったからである。

 この本は本考で言及した3つの分野のヒポクラテスやトゥキュディデスと思った人たちを調べたものであり、多分、世界初のいたってアカデミック本なのである。そうは言っても限定200部の処女出版はかなり改訂を必要としていた、誤字脱字もあったし、分かりにくい部分もあったからである。今から見るといわゆるブログがベースなので当時はシズルな内容なのだが、時間がたつと判りにくい記述がやはり多かった。そのあたりを修正したいと思っても、15版くらい増刷すればその間に修正の機会が著者と出版社の双方からあるので、かなり質の高いリファインが行われるが、この本の場合、どうしようもない。
 そんな折、電子出版という方法があるということで何年か前にその手配をしますよと言う案内が出版社から来た、その費用が5,6万だった気がしているが、そんな気にならなかった。そのうち、私の小説を電子出版することにした。現在6冊出版しているがロングセラー?が出始めて、少し欲が出て、やはり処女作の「デザイン・マーケティング・ブランドの起源」の電子書籍化に本腰を入れようという気になった。
 本格的に取り組んで一か月くらいになるがこれがことのほか大変で毎日作業しているが終わらない。誤字脱字の修正、縦書き用に数字などを和数字に書き換える作業、イラストや写真の組み込み、ページ数入れ、表紙の修正、そして最後の難関はkindleへの入力。これが難関、たとえば文中の写真、イラストが的確に再現されるかなどが分からないのである。
 それらは全てJpegに変更し、ピクセル数を設定しないなど・・・私にしてはかなり高度な技術を必要とするのだ。これまで、文章だけの小説だったので今回のような写真、イラスト入りの本の経験は皆無だからである。

 出版して一番興味深いのがどのくらいの人に読まれるのかである。たとえば・・・・!

ここまで書いていたら、以前、私のところに来たネット本プロモーション制作会社から偶然、電話が入る。現在、第二版製作中の本書の要約サイトをつくらないかというセールスである。偶然と思われるが?要するに本の内容の要約版を面白く作る制作会社らしい。
 製作費は16万円くらいで、メリットは本も売れるし、その作者の他の本も売れるようになるというのだが?その他。関連の広告費も入るとうまいことづくめのトークであるが? 
しかし、それは何とも皮肉な現実をあらわしている。それがヒットするということは本を読みたくない人を集めるということなのである。セールスマン曰く、それを本当に知りたい人は本を買いますよ!と。郵送で資料を送るとのこと・・・!

 ともかく、いくつかの障害はあるが何とか出版にこぎつけよう、その前に思い出したのが、Kindle本というものはすでにどこかで読める本は受け付けないらしい。ということで我がブログの過去の分を非公開にしたのである。打てる手は判る限り打っておくべきと思うからだ。出版にはもう少しかかりそうだ、その節は本考で報告したい。
                                   泉 利治
2021年7月19日

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