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京都春紀行2023

 何回目なのか忘れてしまったくらいの京都春紀行、今年は5月21日から24日までの3泊4日、覚悟して行ったもののいつもの通り4日間天気良好で、20回連続の雨などで行動が妨げられたことは一度もない。
 この旅行は観光旅行というより、取材旅行なのでその行動を妨げられないという事は収穫に違いが出るというものである。

今回の内容
・5月21日―東福寺、東寺・弘法市
・5月22日―地蔵院、宝筐院
・5月23日―金閣寺
・5月24日―京都文化博物館「織田有楽斎」
という毎日が取材なので、かなりハードの内容であった。
一日目の東福寺は鎌倉の建長寺と双璧というべき禅寺の古刹で京都五山第4位、方や鎌倉五山第1位。
東福寺:開山年1236年、開山は円爾、開基は九条道家(摂政)
建長寺:開山年1253年、開山は蘭渓道隆、開基は北条時頼(執権)
京都の方が禅寺も多いので第4位と言っても、建長寺に匹敵するようなスケールである。
開山の円爾は日本人僧であり、当初は天台、真言、禅宗の三宗兼学の寺院であったが、建長寺は純粋禅の専門寺院として日本で二番目の歴史を誇る。当時、寺内は中国語が飛び交う禅の国際センターのようであった。
東福寺の帰り道同聚院(どうじゅいん)という塔頭の前を通った、山門の周りに働く女性の守り本尊の旗が何十本も立っており、興味引いたので入ったら、その塔頭の中にはモルガンお雪のお墓があるとのことで、そんなことから働く女性の守り本尊をうたっている。それならと思い、わが娘のためにお守りを土産に買う。モルガンお雪の名前は知っていたので調べると京都の芸妓で、アメリカの大富豪J.Pモルガンの甥にあたる人物に見染められ、当時8億円の相当の金額で身請けされ、アメリカにわたりそこで洗礼を受けたがやはり日本人なので生まれた京都の同聚院に分骨したのでお墓があるという事であった。ただ娘はモルガンお雪を全く知らなかった。
東寺の弘法市は毎月21日に開かれるが、今回は初日が21日だったので、運よく弘法市に行くことができた。このような縁日は目黒に住んでいた頃、目黒不動尊の縁日が毎月28だったのでよく出かけた。内容は十年一日のごとく、50年前と全く同じなのが面白かった。

 今回の取材旅行の目的は室町幕府の基盤を構築した三人の人物、細川頼之、足利義詮、足利義満のゆかりの地に訪ねることであった。最初に訪ねた地蔵院は細川頼之が晩年暮らし、死後その住まいを臨済宗の寺院にした地蔵院である。竹の寺というだけあり、竹林の中にある小さな寺で、頼之が愛したと言われる庭が縁側から広がり、大げさな庭ではない分、頼之の人となりが伝わってくるような好感が持てる寺であった。
 最初に戻るがこの細川頼之とは二代将軍足利義詮、三代将軍足利義満の管領をやった人物でこの二人から信頼され、義詮が亡くなる時、頼之と義満の二人を枕元に呼んで、頼之には息子を与える、義満には父を与えると遺言を託された、お互い生涯その遺命を守り義満は足利幕府の全盛期を支えた。
次に訪ねた宝筐院は二代将軍義詮の墓がある寺院である。義詮の墓は楠木正行と並んで立っている。敵方ではあったが正行の隣に己の墓を建ててほしいとの遺志からであり、義詮の人となりを伝えている。
3日目の金閣寺は言わずと知れた三代将軍足利義満の建てた寺院で、ここに出かけたのは義満がこの地で北山文化と言われる文化を構築したと言われている。私には金ぴかのイメージしかないそんな寺が北山文化と結びつかなかったからで、それを確認したくて出かけたのである。したがって、そのような目で周りを見て、庭を回ってみたが、大勢の外国人観光客と修学旅行の生徒さんに混じって廻ったせいか金閣寺に来たというインパクトだけが強烈に残ったが、寺域の後ろに広がる北山の景色に義満の狙いわかった気がした。
4日目の「大名茶人織田有楽斎」展は京都に来て知ったので急遽、観ることになった。というのは有楽斎と本阿弥光悦はほぼ同じ時代を共有しており、その関係の深さからそろそろ「光悦はばたく」の核心部分に何らかの情報が欲しいがためである。
4日間の取材旅行であったがそれゆえかと思われるが、どうみても観光旅行とはかけ離れた内容になったことは仕方がなかったがいささかハードな内容であった。そして金閣寺以外は初めての場所であり、なんらかの理由なくして訪れるところではない気がした。

ただ、そんなに強行軍ではなかったがエラク疲れを感じたのは歳のせいかもしれないが
今秋の計画をどのように考えるかの良い教訓になったことは間違いない。余談だが昼食に必ず行く錦小路のウナギ屋に行くまでの通路には巨大な外国人が溢れており、歩くのに一苦労でランチがとれる時間まで店に着けるかが危ぶまれたのが今の京都の現状を表している気がしたものである。
                              2023年6月5日T.I

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