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Column

後藤祐乗はどこに住んでいたのか?

 昨日の半分は室町時代の後藤祐乗という金工家の住まいがどこかを探しあぐねて終わってしまった。
後藤祐乗はスマホでもパソコンでも入れればどんな人物かすぐわかるはずだ。多分、彼は現在、最も多くの人たちから知られる時代なのではないかと思われる。たとえば、刀剣女子と言われる日本刀に関心を示す女性が出現したからである。
 私などは日本刀に関連した小説を書いていながら最低限の知識があれば良い程度で関連したことをネットで見たり、文献を読んだりしながら、面倒な世界に迷い込んだと思ってきゅうきゅうとしている老人とは違い嬉々として真剣な眼差しでガラス越しに名物を見る姿にはこれは勝てないなと思ったものであった。

 ・後藤 祐乗(ごとう ゆうじょう、永享12年(1440年) – 永正9年5月7日(1512年6月20日))は、室町時代の金工家であり、装剣金工の後藤四郎兵衛家の祖。
 ・いわゆる日本刀の外装品で三所物(みところもの)という小柄(こづか)・笄(こうがい)・目貫(めぬき)の三つの付属品を芸術的といわれる領域まで高めた人物である。刀剣女子とは違った視点で私はその三所物を覚えている。
 黒澤明の「用心棒」で仲代達也の持っているピストルを制するために三船敏郎が走りながら刀の鍔の近くの鞘のセットされた小柄(手裏剣)で仲代達也のピストルを打ち落とすのだが、お互い動き回っているのに三船が投げた小柄が仲代の持っている手首に刺さってピストルを落とす。映画だからうまく当たったのだ。実際はうまく刺さらないらしい。
 それと笄(こうがい)は小柄の反対側にセットされている。侍が髷などを手入れする道具(耳かき付き)。それと目貫は刀の柄(刀を持つ編んであるグリップ)の滑り止めの装飾物のなどの製作者の始祖が後藤祐乗である。

 この手の物品を一族が何百年にもわたり作り続けており。後藤祐乗の一族も彼、以後400年にわたっていわゆる金属加工を職として京都でも江戸でも長者として有名であったようだ。最後には金座、大判座を仰せつかったのでいわば、国家を支えた金工家であった。
 この後藤一族、江戸期においては徳川家康から京都の柳原に土地を頂いて、後藤一族12家が屋敷をもって、その中で一族が仕事をしていたようであった。
 このような一族は現在と違い一族がほぼ同じ敷地内の町内に住んいたようで、どちらかと言うと現在の社宅のような形で住んでいた。たとえば本阿弥家がそうであるし、絵師の狩野一族も今でいう上京区に住まいがあったようである。
 上京区に住まいがあった理由は彼らが熱烈な法華宗の信者であり、一族の精神的支柱になっていたからである。その閉鎖性の行き着くさきが血の連結であるので、いわゆる法華宗同士の結婚でこの後藤家、本阿弥家、狩野家などはお互いに一族以外と結婚することはなかったようで、その一族はそれぞれ法華宗のいずれかの菩提寺の檀徒であったようである。したがって京都の町衆はそのような法華宗の結束が事業上においてもさまざまなメリットを生んだようなのだ。
 宗教は当時、それぞれ身分や職業と密接につながっていたようで百姓は浄土真宗、公家は浄土宗、武士は禅宗などになっていたようであった。京都の町衆、いわゆる商人は当時、新興の階層だったので現世利益を解く法華宗は商人の価値観にあっていた。
 とくに京の町衆である商人はその精神的支柱の源泉に近い寺院に集団で住むことが多かった。後藤一族もそんなことから妙覚寺の近くに住んだ、記録として残っている後藤屋敷は妙覚寺のある町内と言う感じの場所にあり、この地域に屋敷を構えていて、そこが住まい兼職場であった。
 
 私は後藤祐乗という一族の始祖がそこに初めから住んでいたことに疑問を持ったので
調べてみると後藤祐乗の墓が京都市内だが上品蓮台寺にあることが分かった、そしてそこは真言宗の寺院である。場所は船岡山の南側にある。調べを進めると後藤一族が法華宗に取り込まれたのは始祖である後藤祐乗の孫の世代からであることが分かってきた。狂信的な法華である彼らも始祖の墓を今さら、移動することが出来なかったようである。
 それに現在記録として残っている後藤屋敷は徳川家康から与えられた土地と言われているが、始祖の後藤祐乗は室町幕府の足利義政に仕えた人なので時代的にも合わなかったのだ。そこで?じゃあ、後藤祐乗の住まいはどこにあったのかということになるのであるが?
 そんなことをここ三日くらい考えているが、もう半月ばかり早ければ、前記した上品蓮台寺にでも出かけて、後藤祐乗の墓や、歴史資料館に行って学芸員に相談してみることもできたのだが?
 日付をいれて今日が誕生日であることが分かった。年齢は想像に任せますが。
                             2024年6月10日
 

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