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Column

日本大学のポテンシャル

  日本大学のアメリカンフットボール部の寮で乾燥大麻と覚醒剤を所持したとして部員が逮捕された。アメフト部は前回が反則タックルで問題を起こし、そのほとぼりが冷めた頃、今回の問題でやはり、本質は何ら変わらないのか?日本大学は理事長にOBの林真理子氏を担ぎ出し、日本大学のあるべき姿を模索して、再構築している最中であると思っていた中での今回の事件であった。多くの人はなんだ!まったく変わっていないじゃないかと思ったに違いない。
 私は大学のブランド戦略に注目し、特に大学の在り方などを世界の大学という枠組みの中で考えてきた。その際、日本の大学で世界の大学と伍して競える大学の一つの典型が日本大学なのではないだろうかと思っていた。その根拠はそのスケールの大きさであり、潤沢な資産を有しているからであった。
 世界の優れた大学の秀逸性をつくる基本は資金力と大学としての価値を高めるべく、めざすべき目標と戦略の策定であると思っている。したがって、日本大学は大学としての価値を高めるめざすべき目標の設定こそが戦略の肝になると思っていたのだ。
 林理事長に代わってからどのような戦略の立案したのか興味があった。つまり、未来に向けた日本大学のめざすべき姿を掲げたのか分からないが、それがあったとしたならばこのような無様な不祥事は起きるはずがないと確信している。

 大学とは本来、その名の通り大きな学びを教えるのが本来の目的であるはずだ。大きな学びとは社会に貢献し、人類の幸せに貢献するような価値を創出するような教えとそれを創出する場であるのではないか。どうも日本大学の経営陣の一部の人たちや一部の学生はその本質をとりちがえているとしか思えない。アメリカンフットボールをやるために日本大学に入る事が目的だった人もいるであろう。しかし、大学はそれだけではないといことを、本来の目的を通して教えるべき場なのである。
 ところが日本大学のアメリカンフットボール部ではタックルする必要もない選手にいわば怪我をさせる目的でタックルをしている!ゲームは記録(録画)されているのだから、その反則タックルが問題になることは大学教育を受けていなくともわかるはずである。ともかく、日本大学のやることはいいこと?も悪いことも大学生が行うにはあまりにも幼稚すぎて話にならない。たしかに巧妙な悪よりはいいかもしれないが?

 日本大学の可能性の源泉はその強大なインフラにあると思っている。以下日本大学のHPから、

「あらゆる学問領域を網羅する総合大学
創立132年を迎えた日本大学は,人文・社会・自然科学のあらゆる領域をカバーする16学部86学科と,短期大学部4学科,通信教育部4学部,大学院そして,専門学校という大きな学びのステージを提供する,日本屈指の規模を誇る総合大学です。これまでに送り出した卒業生は約123万人以上,在学生数は現在約7万人にも上ります。こんなにも多くの人たちが日本大学の学びを選択し,それぞれの未来を創造しているのです。
 16の学部は首都圏を中心にそれぞれキャンパスを展開しており,各学部の教授陣・施設設備は単科大学並みに充実。きめ細かな教育を実現しつつ,すべてが統合的に連携し,多種多様な学びのフィールドを提供しています。さらに,豊富な奨学制度や強力な就職支援において,総合大学としてのスケールメリットを発揮しています。」

まさに世界に冠するスケールなのである。たとえば医学部を持っている総合大学は国立大学は別として著名な例として慶應義塾大学があります。ところが早稲田大学にはありません。この違いはどうも創立者の大学創設におけるヴィジョンの違いにあるようですが早稲田大学は志の高い現在の田中愛治総長がそのあたりの現状を打破するために医科大学との様々な提携を通してカバーしようとしています。しかし、本音は早稲田大学に医学部をつくりたいのではないでしょうか?
要するに日本大学には気づかないような他大学がうらやむようなポテンシャルがあるのです。本来、アメフトで日本一になることで欣喜雀躍する大学ではないはずなのですが?

私は日本大学こそはたとえばTHEのベスト100に入れる日本で3番目の大学をめざせるのではないかと思っている。世界は便利になりつつあり、イイ情報も悪い情報も一瞬にして世界を駆け回る時代なのです。
大学も同じです。本業でTHE(Times Higher Education)で100番に入る意志を顕在化させるのです。つまり、大学の本分で名をあげることが基本にあり、アメフト日本一などはおまけにする気概を持つことが日本大学には重要なのではないかと思っています。
大学の歴史の長さが価値をつくるとは思えませんが日本大学の132年の歴史は大変な価値です。
何事にもランキングを付けると多くの人は注目します。以前、私のいた会社が世界のブランドランキングを世界に先駆けて行い発表しました。その結果、世界の企業がブランドの価値に注目するようになりました。それと同じ発想で行ったのがTHEと思っています。ブランドランキングのランキング評価をする会社にいた私はTHEの内容を分析しました。同じような手法でTHE100番以内の大学を調べて注目した一校がアメリカのカーネギーメロン大学です。この大学は日本大学と同じ芸術部門を持つ総合大学でたとえばTHEのランキングは世界24位です。日本の東大や京大よりかなり上にいるのです。
この大学が上位にいるのは大学教育における価値の創造を重視していることです。この大学は芸術分野の価値創出に力を入れていました。その結果が物語をコンピューターゲームに応用し、展開したことでした。ソニーでは社内留学としてカーネギーメロン大学に社員を何人か留学させているようですがそのような学部がすでにこの大学にはあったのです。 
 私はこの大学を調べていた時に日本でこの大学に一番近い大学はどこかを考えたのですが、もっとも共通項があるので行き着いたのが日本大学でした。
この時、思ったことは日本の教育界には思いも付かない発想ですが、人類にとって新たな価値の領域は拡大しているのです。そんな時代には日本大学のような資金力のある総合大学が有利なことは間違いありません。要は自分の大学はアメフト日本一くらいで満足しているような矮小な志から離れた志と戦略を持つことではないかと思えるのですが?アーティストの林真理子理事長には期待するところが大きくならざるを得ないと思われます!
                             2023年8月21日 T.I

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