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Column

モノを大事する矛盾

 小さい頃、物を大事に使うことの大切さを教わって育った世代である。しかし、今の時代はその考えが社会的に良くない、というより歓迎されないというようになってしまった。

 今月末に自動車税58,600円引き落とされる。忘れっぽくなったと言えど改めて通知はがきを見て”こんな高かったかな?“と疑問符が付いた。そして、初めてその納税通知書を読んで唖然とする。「一定年数を経過した自動車(重課)となっている。新規登録から13年を超えた自動車の税額が15%アップする旨のことが書いてあった。
“おいおい、物を大事に使って、どこが悪いのだ!”という気分である。一番良いのは古いものは捨てて新しいものを買った人―優遇される(罰金を科されない)。昔、小学校で教わった哲学は否定される時代になった!
この考え方が人間にも適用されてきている気がしないではない。こんなふうだ、「生まれてから65年を超えた人間(重課)の税額が○○%加算されます」
老人には生きづらい時代である。たとえば老人専門の犯罪が横行している。電話に出ると滅多に連絡をしてこない孫だったりする。あっという間に嘘をいってお金を振り込ませる。
三日前に老人の施設の看護人の死刑が決まった。何人かをベランダから放り投げたらしい。面倒な老人を殺害したからだ。やっと死刑になる(決して喜んでいるわけではない)
老人は命を大切にしている人々である。私の車のような人たちなのだ。

 ということで今回15年目に入った我がBMW330Xiについて考えてみた。自動車税の他に自動車保険というのがあるこれがなんと74,000円、ガソリン代年72,000円,一ヵ年点検100,000円トータルで304,000円。月に換算すると25,300円。年金生活者には耐えられない出費である。
 これがEVにしたらどうだろう?と考えた。違いは新車を買う初期費用が3,000,000
円、そこから補助金が840,000円。そうすると初期費用が2,160,000円になる。私の年齢であと10年乗るとして、年216000(月額18000円)+燃料代+保険料+税金。燃料代、保険料、税金が総額で7300円以内で納まればEVを買うべきだ。しかしそれは無理であろう?
 したがって、現在の老BMW330Xiを乗る方が安いことになる。しかし、とんでもない修理費が発生するかもしれない。ただ、何となくハード関連で見るととんとんのような気がする。ということで他に何か手放せないものがあるのではないかと考えてみた。
BMW330Xi、エニカシェルパ(58年間現役の腕時計)、ライツミノルタ(故障)&ライカのズームレンズ、ライカの双眼鏡、NIKON・FE&F1,4標準レンズ、Henry Poolのスーツ、ブリックの傘、居間にあるビクトリア朝の絵画、キャリッジクロック×2、チェロ・・
・・・書き出しているうちに行き着いた結論がそれらはモノではなく、私のアイデンティティであるという事なのだ。これらと人生を共にしてきたという事なのである。金額の多寡では表せない自分自身であるという事である。
たしかに15年経ってもその間にガレージに入っていたBMW330Xiはボディはその歳月を超えた美しさで新車と見間違うばかりである(富士スーパーのパーキングで検証済み?)
それは三菱のEV車では得られない歓びと満足感を与えてくれるものである。その人しかわからないものなのだろう。金額計算を超えた何か、なのだ。車の愛好家にとって人生最後の自動車としたらば、それはどんな意味をもつものか考えるべくもない。
                             2023年6月19日T.I

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