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Column

ダゲール街の人々

「ダゲール街の人々」という、ドキュメンタリー映画のようなフランスの作品を見た。そして、パリに行く機会があったとしたら、パリで行くところがもう一つ増えたようだと思った。ルーブル美術館やシャンゼリゼ通りもいいがもっとパリらしいところがイイだろうと思っていても手がかりがないと行くことができないからである。
ロンドンには数えきれないくらい足を運んで、偶然お気に入りの場所を探し当てた。バークリースクウェアからマウントストリートに向かう道である。バークリースクウェアではベンチに陣取りゆっくりと(不健康だが)葉巻を楽しんだあと、マウントストリートに向かう、そこはなんら観光ガイドには載っていないが、この通りの両脇の店やレストランは国際都市ロンドンではなく英国人のためのロンドンと言う感じがするのである。このように旅行案内書に書いていないところの方がロンドンらしさ、ヨーロッパらしいのである。

 この映画を観終って。そういえばこんなパリには行っていないなと思った。ただこの映画は1975年の作なので今から50年前の映画だ。すぐにグーグルマップのストリートヴューでダゲール街を通ってみた。映画のダゲール街とは違っている。50年もたっているのだから仕方がないが、その差は歴然だが下町らしいようだ?
でも、私のパリでの定宿のあるサントノーレ通りとはえらく違うが、あえて言うならばサントノーレ通りの末端あたりには近そうだ。と言うのはサントノーレ通りの末端にある中華料理の店の焼きそばを何回か買いに行ったからだ。あの有名なサントノーレ通りの端の端はまさに下町の風情なのだ。
 
 気に入った都市に何回か行くと、別に理由はないがそこに行かないとその街に行った気がしない場所があるものである。そこはその人ならではの特別な何かがあるのだろう?  
ロンドンならサザビーズもそうだ。どうみても世界一のオークションハウスの入口とは思えない、注意していないと通り過ぎてしまうような小さな入り口である。入ると怪訝そうな顔でこちらを見つめるガードマン。目を合わせると、私は少し会釈をして、微笑むと、必ず安心して微笑み返して、よくいらしてくれました!というような表情で迎えてくれる。プレヴューで解放された部屋に入ると、“ああ、ロンドンに来たのだ!”と実感がするものである。
パリはどこかなと?考えた、正直、パリは定宿が決まったのが遅かったせいか、あえて言うならばヴァンドーム広場かもしれない。この場所は半世紀くらい前にシングルシンガーズというコーラスグループのレコードで「ヴァンドーム広場」というタイトルのレコードを買ったことでいつかは行きたいところになっていた。
やっとさがしあてたホテルがSLHのヴァンドームホテルになったことで、10メートルくらい歩くとヴァンドーム広場に着く。そしてオステリリッツ記念柱の周りを一周する。ダイアナ妃が最後に泊まったリッツホテルの前を通り、ヴァン・クリフなどの宝飾店のショーウインドーを観ながらブラブラ歩く、最後は広場の中心にあるナポレオンの勝利の証を確認する。パリに来たのだという気になるものである。

何度も行く旅行地とは自分だけのその街ならではの居心地の良い場所を探し当てるに尽きると思っている。なので、そうは言ってもこの街パリはまだ自分の街になっていな気がしないではない。自分の街なったという感じに到達するにはあと何回か行かないと駄目だろう。重要なことは自分ならではのお気に入りの場所とは何か魂が同化できる感じがする場所と言えるかもしれない。たとえばロンドンにおけるマウントストリートやサザビーズ、ベネツィアのグランカナルのサンタマリア・デル・サル―テ教会の前のカフェとか京都の三条大橋から北を眺める。とかのその地に来たという実感を必ず与えてくれる場所である。

多分そこは取り立て、とくに語るに足るものがあるわけではないが本人しか感じることができる場所なのだ。まあ、オカルトめいて語るならば自分の前世の人がその場所で何か忘れられない出来事が起きた場所なのではないか?
以前、ウィーンに行った時、どこかの名所旧跡を見た帰りに本屋の店頭で手に取った銅版画に妙に魅かれて購入し日本に戻ってから、その場所を知りたくてウィーン大使館に銅版画の画像を送りその場所がどこかを聞いたことがあった。
親切な日本人職員がその場所を教えてくれた。私はその住所をグーグルマップで探し当て、ストリートヴューで見ると間違いなくその場所であったことを確認した。その後、私の会社はその景色と同じような場所の前に事務所を借りていたことが分かった。
その時感じたのは自分の前世の人にとって何らかの出来事が起きた場所なのだろうと思ったことであった。

ダゲ―ル街にはそんな何かがあるのではないかと思わせるフツーの街なのである。フツーの街と言うのが重要な気がしないではない。というのはフツーの街にこそ自分との結びつける何かを感じることがあるからだ。シャンゼリゼ通りやルーブル美術館が自分にとって特別の場所である?ジパンシーやダ・ヴィンチじゃあるまいし!
さて、どうだろう?海外旅行がむずかしい年齢になってきている。ここ、1,2年以内?
                             2022年12月19日T.I

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