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Column

モナリザに匹敵する日本画は?

 「アナザーストーリー」というNHKのドキュメンタリー番組がある。興味深いテーマを扱った時は見るようにしている。
フランスがモナリザを海外の国に貸し出したことは2回しかないそうである。最初はアメリカで、その次が日本である。その時の総理大臣の田中角栄が政治的な取引の条件として、当時のフランスのポンピドー大統領からこの歴史的な条件を飲ませた結果なのである。1975年の話なので丁度50年前のことである。
 私が29歳の頃であるが、並んでみるほどのモノではないし、ミイハー的興味を嫌っていた私はその狂騒を対岸の火事のように眺めていた。

 今回、このフランスが誇る至宝がモナリザとしたら、それに匹敵する日本画は何なのかということを考えた。家内が少し考えて・・・“風神雷神かな・・・?”確かにそれはテーマもユニークで日本にもギリシャの神々がいるのだということを感じさせるような絵でインパクトがあるに違いない。・・・・じゃあ、伊藤若冲の何かかな?”と言ったので
私は即座に否定した、“あり得ない”最近注目されてきた流行作家のようであるからだ。
“そうすると・・・風神雷神かな?”“うーん・・・可能性はあるかもしれない、一応、国宝だし”それでも海外の人から見ると日本らしさがあるかと言うと?
“雪舟がいるよ・・・!”彼なら申し分がない。水墨画だし・・・“と言った後、それは中国にもあるではないか?と言う疑問が頭をよぎった。
“他にあるとしたら・・・”思い浮かばないものだ。

気になって数日後にネットで調べると。長谷川等伯の「松林図屏風」・・・・日本美の極致といわれていた。少し考えると明らかに申し分ない。この絵は国立博物館で毎年正月の数日間だけ展示される。そこには日本最高の絵を国民に公開するという意志のようなものを感じるからだ。あれは国家の所有なのかな?
水墨画、テーマの深み、スケール、日本画らしさ(屏風画と言う対象の日本らしさ・・・)そう考えると俵屋宗達の「松島図屏風」も素晴らしい、構図、表現の独創性、それを見ると実際に荒波の音が聴こえてくるような絵である。日本人の絵でありながらアメリカの美術館が所有しているのもモナリザと共通している。
雪舟の絵、辺りが妥当かと思ったが、そうなるとパンチのある、時代を超えた価値のようなもので等伯や宗達に比べると見劣りする気がしないではなかった。

それぞれの国にはその国、最高の絵があると思われるがそんな展覧会でも開催してくれたら多分、人類史上最高の展覧会になるだろう。
 私は近代の絵だが横山大観の「生々流転」も素晴らしいと思う。雨のしずくが小川をつくり、大河となって海にそそぐ巻紙絵で日本ならではの絵である。墨で巻紙に描かれたこの絵を見ると、水の命と人の命が大きなかかわりを持って世界を形作っていることがわかる。大観は水の命に地球の命を見たのではないかと思った。そう考えると、もの凄いスケールの絵である。そんな絵は空前絶後であるからだ。
 私は先々月、念願だった京都の貴船神社にいった。そこでの雫が鴨川の始まりであるからと言うことで行きたかったのである。残念ながら最初の一滴は見ることは出来なかったが、最初の流れは見た。今から考えるとそこに行きたかった理由は大観の絵を確認したかったのではないかと思った。
                            2025年7月7日T>I
                              

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