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Column

60年前のエニカの修繕、その後

 その後のエニカについて書こうと思う。前稿の終わりに「明日信頼のおける修理店にもって行くことになったのだ」と書いたところで終わっている。
 信頼のおける修理店とは一度オーバーホールをしてもらった渋谷の“宝石広場”という店の修理部のことなのである。というのはここで12年前にパティクフィリップを買い、確か一度オーバーホールそしてもらったということと、このエニカのオーバーホールもお願いしたことがあったからである。
 パティクもエニカもこの店で完璧な状態で戻されたので、また、ここにもっていけば間違いなかった。ただ出不精になった私はエニカの具合が悪くなった時に渋谷にもっていくのが面倒になったのだ。そうしたら、藤沢の小田急の中に“なんぼや”という店がありここにも時計修理部があることを知り、車で20分くらいで行けるのでここに飛び込んだ。
まあ、これが間違いであった。確かに“なんぼや“(ふざけた名前の店)なので心配はしていたがここに店を構えているのなら大丈夫だろうと思った。しかし、そこは名前の通りやはり、ふざけていた。  
修理中に竜頭に関わる部品を壊してしまい、オリジナルの竜頭が使えなくなり代用品のリューズを付けてきたのである。確かにその代用品のリューズは普通の人がみれば違和感を感じないだろうが、私のように半世紀以上使い続けている人間にとっては違和感を感じながら使い続けた?
 しかしその内、リューズの具合が悪くなった、時刻を合わせるためにリューズを動かすために引っ張り出すとリューズが取れてしまうのである。ある日、愛犬の散歩に公園を歩いている時、時計の時刻がスマホのそれとだいぶ違うので直すためにリーズを引っ張り出したらポロリと外れて落としてしまったのである。落とした場所が良くなかった、舗装された歩道の端であったが、その先には落ち葉が堆積されていた。もちろん、犬の紐を柵に括り付けて、30分も探したが見当たらない、次の日も、次の日も、探したがリューズは見つからなかった。ただ、私はその代用品のリューズが嫌いだったので、この機にオリジナルのリューズに付け替えようと思った。

なんぼやという所ではない店というところで思い出したのは最初にオーバーホールをした宝石広場に持っていった。リストに私のエニカの記録の記載があったので、何となくほっとした。ここは上手くやる気がした。店がオープンする11時をめどに渋谷に出かけた。
 4階の修理部に言って見せたら、私の説明を聞いて奥に持っていて20分くらいして出てきて、この修理は私のところでは難しいですね?ということであった。というが私どもは新しい時計の修理の専門でこのようなアンティークは?ということであった。
どうも、時計のニーズの多様化でアンティークは別のカテゴリーになってきたらしい。
「いや、でも前回あれだけきちんとやっていただいたので?」と踏ん張ってこうなった経緯と最初のオーバーホールの際の完璧な仕事ぶりを知っているからと説明したら。
「ちょっと時間がかかりますが3週間ばかり預からせてください」という話になった。
3週間もかかるのか、それで駄目でしたじゃ?と思い直し私は了解して持ち帰った。
その時、アンティーク時計専門の修理専門の技師がやればということを聞いたので、
と時計修理もいろいろあることに気づいて、「なんぼや」についてネットで見ると修理は専門のALLU REPAIRというところと提携して、万全の態勢で対応していますと謳っていた。
 それなら、今度は以前の失策の汚名挽回として頑張るだろうと思い、一応、見させてみるかということで、前回の話をして、汚名挽回のためにやる気はないかというような感じで問い合わせた。というのはあのような仕事を個人ではなく会社として請け負っているところは、いわゆるリペアマンは何人もいて、一回目のリペアマンの腕が悪かったということかもしれなかった。したがって、彼の失敗は彼の判断の中で闇に葬られたということかもしれなかった。それなら、事情を話して別のリペアマンにお願いすればいいことであった。
私の名が会社の修理リストに残っており、事情を分かった別のリペアマンが挑戦することになった。2週間預けて、結論から言うとオリジナルのリューズを使っての修理は不可能ではあるがヨーロッパにこのような時計のパーツを持っているルートを通して購入できるという回答を得た。しかし、それが何か月先かわからない、それと価格が8万円くらいということであった。修理が4万円+8万円計12万円+消費税。13万円か?
 それだけかけるのなら?私は考えた挙句、もう一軒このような一応最高らしいアンティーク時計の修理工房にダメもとで聞いてみることにした。もしそこで色よい返事をいただけなかったら、エニカは額に入れて飾ろうと思った。来週、問い合わせてみよう。
                           2025年4月14日T>I

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