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Column

Kindle出版社

 AmazonのKindle出版社で10冊ばかりの本を出版している。そんなに売れてはいないが何人かの読者が購読してくれて、評価をしてくれている。
 一番売れているのが「宗達はじまる」という本で出版以来コンスタントに売れ続けている本であり、これは謎の絵師俵屋宗達を扱った小説として、先駆けたものと自負してはいるが私自身楽しんで書いた処女作である。
この本は「琳派400年」を来年に控えた2014年に出版された「芸術新潮・宗達のすべて」雑誌を起点して生まれた本である。本書を書くにあたり京都に年に何度も足を運び、様々な資料や現地を歩き、400年前に生きた俵屋宗達を思い浮かべ、その後2年かけて書いたものである。
 この本はその後プロの作家が同じような趣向で書いているので先鞭をつけたのかな?とも思っている。この小説は700枚にも及ぶものなので、内容的に江戸版と現代版に分けて江戸版を「宗達はじまる」現代版を「北極のかなたへ」の二つの本にして出版している。

 最初に出版したのが「宗達はじまる」でこれは明らかに俵屋宗達の本であるということが分かるのでそのブランド力で出版8年目に入っても読まれ続けているので筆者のロングセラー本と言えるだろう。
そして、もう一つの本の「北極のかなたへ」はそれに比べると年に3,4冊し売れない本である。ただ、唯一、読者の評価で5つ星をいただいている本である。
 この本は実際に起きた有名な迷宮入りの殺人事件を下敷きにしており、その関係者でもある著者のその事件に対する解答でもあるのだ。この本は「宗達はじまる」が時間的スケールの大きさを特徴としたならば、空間的スケールの大きさが特徴である。
著者はグーグルマップ上をストリートビューでベルゲンからフィヨルドに沿った道を犯人を追って北極の彼方にまで出かけたのであった。したがって、この本の犯人と思しき人の家は実際に北極海に面した瀟洒な家に住んでおり、主人公の榊史郎と僚友の山本刑事は極寒の午後にその家を訪ねる。しかし・・・その後、尋ねたその人はある暖かな秋空の日に家の前から海に出て釣りをしている間に事故でボートから落ちたか?自から入水したか分からない謎の死を遂げる。その体は海流によって北極海の氷の下にしまい込まれる・・・
 その後、榊史郎(主人公)のもとに亡くなった彼が所属していた組織の高位の人物から手紙が来る。それはプラハの郵便局の消印があった。榊達はこの事件の奥深さを思い知らされる・・・

 この著作の数少ない読者の一人が★★★★★をつけてくれたのはそのあたりを評価してくれたのだと思うと満足を覚えるものである。この本のリアリティーはアマゾンのプライムビデオを見るようになってナチに関する様々な映画が多い事を知るにつけて、ヨーロッパの人々にとってその蛮行の傷の深さを思い知らされるが、その渦に日本人がこのような形で引き込まれ、罪のない子供たちまで殺害されるということが現実に起きた?ことを思い浮かべているのである。日本人にもナチの蛮行の余波が及ぶことがあるのだ。
 著者は湘南電車で大船駅と藤沢駅の中間に見える巨大なアイパークと呼ばれる最先端医療の研究所群を見るたびに北極海の氷の下に消えたハンス・グスタフ・グラーフがここで働いていたことを昨日のように思い出す。そして、その彼を思うたびにあの事件は永久に解決される事はない事件になることに想いを馳せるのであった。
 因みにこの本の表紙の人物はダクラス・フェアバンクス・Jrでそのスチールはどうも「ゼンダ城の虜」において彼が演じたへンツオ伯爵のポートレートであることがわかった。偶然だがこの物語が底辺で現代版「ゼンダ城の虜」のような香りを持っていたとしたらなら満足ですが?
                            2023年10月9日、T.I

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