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Column

TOPGUN MAVERICK

 何年か前にトップガンマーベリックの新作が封切られるという話を聞いて、封切られたら映画館で観たいものだと思って楽しみにしていた、ところが一向に上映されない、延び延びになって、そのうちに世界がコロナになり、映画館どころではなくなった。コロナが終焉するまで映画はお預けか?と3年近く待った?おかしいなと思ったら、映画館では封切らず自宅のパソコンで観れるようになった。ネット小説ならぬネットロードショウなのだ。そう言う時代なのか?いずれ、パソコンで観られると思ったが、今では逆でいつか映画館で観られるという時代になったのだ。

 遅ればせながらトップガンマーベリックを観た400円に満たない料金で観られるのは確かにお得だが、映画館で見ることができたら成程、凄いことになったろう!という気になった映画である。というのはジェット戦闘機の空中戦の映像などが見事に造られているので、映画館の巨大なスクリーンと音響が臨場感を最大限に引き出される気がしたからである。トム・クルーズの適役であったTOPGUNはアマゾンプレミアムの会員なら毎日でも見ることができるので、何度見たか忘れてしまった。

 好きな理由の一つには基本的に戦闘機が好きな子供だったからだろう。小学校のころは言わずと知れたゼロ戦である。休み時間などには、授業中でもノートの脇にゼロ戦の絵を描いていた。戦争には負けたがゼロ戦は負けなかったという認識が子供時代の真実であった。それが大きくなったのがTOPGUNになったのだろう。F―14がゼロ戦の代替機であった。それがマーベリックではF-18に代わる。F-14も18も海軍の飛行機である。
しかし、トム・クルーズにはF-14がふさわしいと思ったのかマーベリックで敵の倉庫に眠っていたF-14で脱走する。挙句の果てに第五世代の戦闘機と空中戦までやるというサービスぶりにファンは大喝采だろう。
しかし、そのF―14の脱走は必然性があったというのがミソである。というのは敵の飛行場が米軍の攻撃で破壊されて、短い距離で飛ばなくていけないことになり 、可変翼を持つF-14ならでは翼を広げて揚力を稼ぎ、短い滑走で敵基地から逃げ出せたからである。このあたりはよく考えられていると感心する。その後、追撃されて第5世代の戦闘機との空中戦も勝つあたりはF-14ファンを喜ばせるサービスが満載で玉切れによる戦闘不能の時に味方の戦闘機が来て、難を逃れ空母に帰還、ラストシーンも第一作と同じなのがいい。

 識者によるとこれからはジェット戦闘機も無人化の時代に入るそうで人が乗っての戦闘機の時代ではなくなるそうであるウクライナは人が乗る戦闘機のF-16を求めており、相当数が提供される見通しである。F-16はアメリカ空軍の戦闘機でコードネームからいくとF-18より先につくられた戦闘機のようである。ただ、なぜウクライナがF-16を欲しがるのか?それはベストセラー戦闘機であるからだ。値段が安く、その割に性能は何十年経っても第一線で通用する。多分、西側のほとんどの国が常備しているのはF―16と思われる。そのような国がF-16をウクライナに提供したのだ。現在、ウクライナは懸命に乗務員の教育にやっきになっているだろう。一回の教育で全ての戦闘機が利用できるメリットがあるのだからだ。

 私の本棚に「F-16戦闘機の全て:1990年代のファイター」という本がある。1984年に買っている。なぜこんな本を買ったのかというとF-16のスタイリングが乗り物のデザイン開発に多くのインスピレーションを与えると思ったからである。
 乗り物のデザインをするにあたって、多くのヒントを航空機から得た記憶がある。たとえば英仏で開発されたコンコルド、そしてこのF―16のデザインを私はヒントにしてスケッチを描いたし、またボディ線図を描く時にもヒントにした。とくに、原寸のクレイモデルなどをつくられない時はボディ線図の際にディテールのスケッチを何枚も描いて頭の中でボディ形状を確認して図面に落とし込むのであった。
 そして最終的なチェックは原寸の木型で行い、修正するのだが私の場合、その出来上がった木型はイメージ通りのことが多かった。
 F-16の開発目的は安価で高性能な戦闘機を開発するということで、F-15の戦闘機一機の値段でF―16、2機買えた?理由はF-15の2つのエンジンの一つで作ったからである。開発コンセプトの「安上がりな軽量戦闘機」通りになったようだ。
 それに比べるとTOPGUNのF-14は可変翼というような複雑な機能を持ち二つのターボファンを持っているので最も高価な戦闘機なのであろう。自動車で言うとロールスロイスといえるだろうか?

 TOPGUNは多分、人が乗る戦闘機のロマンを追求した映画のような気がしないではない。トム・クルーズも歳だし、人の乗らない戦闘機の時代になるとしたらTOPGUN MAVERICKは古き良き時代の一つのオマージュになるような気がしないではない。
                            2023年7月24日 T.I

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