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Column

現在の職業は作家

 ご職業は?と訊かれたら。ためらわずに作家と言おう。というのは毎月の唯一の年金以外の収入は著作の印税だからである。毎月末必ず入っているのだ。金額の多寡は別の話だ!
一番売れているのは「宗達はじまる」出版初期はもの凄い量で、カウントの仕方を知らなかったので(一冊と1ページを勘違いしたので“これは万単位の印税が入るのではないかと思ったくらいであった。しかし、2,3千円でおかしい?と思いアマゾンに聞くと、カウント数は一冊じゃなくて1ページの間違いで、まあ仕方がないと思ったが、それでも発売後7年経つてもまだ読まれているのはそれはそれで凄いのだなと自画自賛。
 なぜ、「宗達はじまる」がロングセラーになっているのだろうかを考えてみると
①やはり俵屋宗達という超有名だが実は生まれた場所も、亡くなった場所も分からず、謎に彩られているから興味をそそられるのだろう?
②同じようなテーマで著名な作家が宗達の本を書いていることもある。原田マハ氏、柳広司氏などが同じような理由から俵屋宗達物語を創作して出版した。
③それと運よく私の本が宗達関連の学術書の中の著名な研究書の中にまぎれて紹介されている。ことが大きいのではないかと思われる。
④アマゾンkindleで出版しているのでその手の読者層の人にとって手軽である。
 そう書いてみると①と③が大きい理由かと思う。
 また、読んでみると小説半分、研究書半分という特異な位置づけというのもあるかもしれない。私は他の宗達関連の本は読んでいないがいくら創造力をたくましくしても宗達が
天正遣欧少年使節と一緒にバチカンに行ったというような奇想天外な筋書きを考えるほどの道徳的逸脱?を犯す勇気はとてもないからである。
 それじゃなくとも私の書いたことがかなりきわどいかな?と思う点はいくつかあるからで、ただ、私にしてみれば山根有三氏以後の研究家の中でもこれは言い過ぎなのではないかと思うような人もまま、いるからで。それゆえ、「宗達はじまる」は真実らしい、虚実らしいというきわどいことがゲーム感覚で展開されているのが面白さなのではなかろうか。

 この路線の第二弾が「光悦はばたく」である。この本の着眼点は光悦が一応、主役ではあるが本当の主役は本阿弥家という家系の謎が本当の主役、という点にある。
本阿弥家とは鎌倉時代に起源を持つ五条長春という公家の家に生まれた人物が起こしたという家系図が根底にある小説で、その家系図を是として展開している。いわゆる、日本刀という至高の芸術品にかかわった千年の家系の事ならば、超絶的な天才が生まれてもおかしくないという前提に立った小説なのであり、時間軸も千年の中なので綺羅星の如く歴史書に出てくる人たちが物語の中に登場してくる。
ただ、正直なところは書き始めたはいいがあまりにスケール大きすぎて、風呂敷がたためない状態が今で肝心の本阿弥光悦に行きつかないというのが現状であり、彼に行き着くにはあと二百年かかるのである。まさに「失われた時を求めて」状態で、正直、何度も投げ出そうと思ったがその段になると何となく面白い人物が顕れて書き繋いでいるというのが現状なのである。
この本の面倒なことは実在の人物が登場するのでその人物を書く面倒さである。たとえば、今、足利義満を書いているがこの人物の言動は勿論、その人物とかかわりのある人物の人となりも知らなければ書けないし、その人たちがある時代のある瞬間に起こした様々なことはこれまで語られていることと齟齬があってはいけない。天正遣欧少年使節のようなことは書きたくないからである。
人物に関しては基本的にウィキペデアと吉川弘文館の人物叢書を参考にしている。中には嫌な人物もいるもので、そこはある程度、演出と状況を鑑みて書かざるを得ないことになる。私の物語の中ではどうも主人公と接する人に意地悪な極悪人はあまり登場しないのは私が惚れて書いている人だからそんな人に陰険な意地悪はしないであろうということになってしまうのである。

 私ごとになるが私の人生でも嫌な奴ベスト3というのがいる。こいつだけは許せないという人である。悪人を書く場合そのような人を下敷きにして書けば臨場感ある物語が書けるかもしれない。そう言う自分も多分どなたかの悪人列伝の一人になっているのかもしれない??まあ、仕方がない。
                             2023年5月1日T.I

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