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Column

昔の映画、昔の新聞

 時々、昔の映画をみる楽しみは映画そのものより、忘れていた常識を憶い出させてくれるからである。 
 アマゾンで映画の会員になると、好きなだけ映画を観ることができるのだが、ここ何年かは新作に限らず昔の邦画、洋画を観ることができるが、邦画の面白さはその映画以上に、多分、映画製作者か気に留めていないところにえらく感動するものである。
 昨日「JA750機行方不明」という映画を観た。観たきっかけはアマゾンの評価レートが4.5★であったので、こんな古い映画のこの高評価の訳を知りたかったこともあった。昭和33年(1958年)の映画である。64年前の映画であり、山梨県の山中で行方不明になったセスナ機を探し出す新聞記者の物語なのだ。
 驚きの始まりはセスナ機の映像が明らかに模型飛行機であることが見え見えの映像の可笑しさ、普通に飛んでいるのだがプロペラがエラクゆっくりと回転している。こんなんじゃ、空を飛ぶわけはないよ!と思うし、模型の質も低く、これでよくOKになったな!
 その次はこれは驚きだが①現在の感覚ならニュースが公になった段階で警察、消防署、地元の関係団体、自衛隊などがすぐに出動するはずだが、だれも行く様子がなく、新聞記者の二人が特ダネを求めて捜索に行く。②若い新聞記者は新聞社のオートバイで動くのだが当時はヘルメット着用しなくてもいいので、恋人を乗せた二人乗りでもノーヘルで良かったのだという驚き。一番感心したのが、もう一人の老練な新聞記者は入念に準備して、それなりのリュックやザイルを持って出るが。気になったのはリックの一部に格子状の窓があるリックなのだ。気に留めた程度であったが、これが重要であった。
 山の遭難者を発見に行ったのでその内容をいち早く知らせるためにそのリックの中身は何と!!伝書鳩のかご入りリックだったのである。正直、それには感心した。確かに今なら静止衛星交信できる携帯無線機でないと山の中なら連絡の取りようがないだろう。
 老練な記者は若い記者が山中で滑落して動けない状況と遭難機を発見した事実を伝書鳩に託して報せたのであった。実際、当時の無線機なら相当大きく、重いものであったろう。
それに比べると伝書鳩1羽とそれを保護する籠ならえらく便利である。
 映画のラストシーンは救助隊が来て動けない若い記者を助けて、老練な記者はこの特ダネの功績をその若い記者に譲り、映画は感動的に終わるのだが、実はその老練な記者は一度も特ダネをあげることができずに山梨県の支所で数カ月後定年退職をするという背景を持っており、一方若い記者は特ダネを掴んで早く東京に戻りたいと思っている野心家の記者なのである。そのあたりの感動がアマゾンレートで4.5を付けた理由なのだが?そうは言ってもあの模型飛行機はないよな!と思った。日活の映画である。
 
 ただ、名監督と言われた人の映画は今見ても時代を感じさせないものである。日本映画ではまず、黒澤明の映画だ、洋画では最近、観た映画であるが「絶壁の彼方へ」。素晴らしい映画である。
この映画も飛行機のシーンもあったが違和感はなかったし、それ以上に今から70年近いボスニアの独裁者の死にまつわるサスペンスというのが時代を先取りしていた。要するにディテールが正確に描かれているのである。
以前、B級映画の監督をテーマにした映画を観たが、いみじくもその監督が言っていたことが観客はそんな細かいことをみてはいないから大丈夫だ!というポリシーで映画を作り続けるという映画なのだが。べラ・ルゴシを動かない大蛇と戦わせるのだが、彼は名優だから模造品の蛇でも生きているように見せてくれるというB級映画の名監督ならではの哲学。これはこれで徹したのだから彼の映画が出来たのだろう。しかし、かれの映画を観ると、
確かに「神はディテールに宿る」とは本当だと思った。
                            2022年11月14日T.I

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