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Column

後期高齢者ひきこもごも

 高齢者という領域に入った身に対して、「後期」を冠として付けられるとさらに国家から追い打ちをかけられたような気になる。75歳を過ぎた人々を一括りに呼ぶ名称である。 
 名実ともにそうなって11カ月、意識としてそんなことを意識したこともなかったのだが
先ず喜ばしいことに、健康保険の負担金が1割になった。これには驚いた、と言ってその特権を使ってもっと病気になろうなどと考えたことなどはない、それにしてもそうなってどれだけのものかを分からないが確実なことは自分の医療費の本当の金額がすぐに判ることである。
 昨日、歯科医の最後の治療の一環としとして歯石を取るというメニューをこなすのが定石のようである。精算で支払った金額が610円であった。ということは現金正価が6100円なのである。その後でその作業工程を思い出してみたのだがその金額が安いかどうかは分からない。わかったのは健康保険に入っていない人に支払う金額は高額だなということと、確かに病気マシーンと言われる後期高齢者の国家負担額は膨大なものであろうということである。国家にとって人口に対してこの割合の多い国は確かに貧しくなるのは当然である。何も生産しない人たちが膨大な国の経費を使うのだからである。
 しかし、これまでどれだけの貢献を国家にしたのだろうかを考えると、その見返りなのであろう。国家とは国民に支えられて成り立つものである。まして、後期高齢者の人たちは国家を世界有数の位置に押し上げた人たちだ。正直、そんな実感はないが?ただ、これは国民も頑張ったが国家も頑張ったお陰である。

 長い人生を振り返ってみると私はそれなりに健康に気を遣っていた部類に入ると思う。というのは体調が悪いと頭が働かないタイプの人間だからだ。少なからずアイデアを出すことが生業としている人たちはベストな体調を保つことによって、仕事の質も生産性も上がるからだ。その背景には基本的に体力があることで、一つの課題に対する集中力と持続力を維持することができるからなのではないかと思う。
 寝ても覚めてもと言うが本当に寝ている間にもズーッと考えているのである。たっぷり寝て起きた朝に前日の課題は解決されていることが多かった。よく眠れるということは健康の証であり、仕事の生産性も上がる。
ただ、最近は睡眠が細切れになったようである。本考は午前4時に書いている。2時前に起きてしまい、少し調べ物をして書き始めたのである。昨日は一気に6時間は寝たが、今日は4時間も経たないで眼が覚めてしまった。これはこれで良いこともある。寝起きの上質な時間をフルに使えるからだ。でないとこんなことを書く気にもならない。まず、文章がさらさら書けるのである。こんなことは文章の質はともあれ、健康な頭脳でないと私の場合、実現できない。
 これまでは悲喜こもごもの「喜」を書いてきたが、実は「悲」の部分が本考を書くきっかけになったのである。
たとえば昨年、30年通い慣れたスーパーに買い物に出かけた際になんと一時停止違反で切符を切られたのである。たしかに止まれと書いてある標識がある。正直そんなものを見なくともその道に入るには確認が必要なT字路なのである、しかし、その停止線で止まったのでは左から来る自動車を確認できない、したがって、徐行し、確認しながら入らないといけない。それが現実的な進入の仕方なのである。だが、止まっていない、その違反を警官は高齢者特有の認知障害と判断し、高齢者でなくとも難しいテストを課した・・・運転免許証を剥奪するつもりで。

 そして、こんなこともある。後期高齢者特権を使えない医学分野がある。私が体験した分野はインプラントである。以下、歯科医とのやり取り・・・
「それは面倒ですね・・・?」と一応躊躇したが本音は入れ歯が年寄りの典型と思ったからだ。歯科医は提案した「方法としてはインプラントがあります?・・・・しかしはここではそれを扱っていません」いわゆる、この歯医者にはその歯科治療のメニューがないのである。
 一般的に歯科医院はその資格を持った医師が個人的に開いたところがほとんどであるので、インプラントのような最新技術を使った治療法はその医師が後で資格を取るか?その資格を持った医師を雇うしか方法がないのだ?では、それがないとその歯科医がつぶれるかというとそうでないと思われる。
 私は、じゃあ!ということからインプラントができる歯科医に通うことになった。そこで歯科医師からこう告げられた。
「入れ歯に代わる方法はインプラントしかありませんね」と言った後、説明してくれた、要は簡単なことで入れ歯の歯を支えている骨にネジ止めするのである。方法としては至極当たり前のことである。その説明を一通りした後。
「これは保険がきかないので、費用は30万円です!」
「はあ、そうですか・・・?」後期高齢者の保険特例を使っても3万円かかる?しかし、物は試しでやってみるか?その工程はまさにHONDA時代の工場でやっていた方法と同じで、歯根に穴をあけて、タップでねじ山を作り、そこに歯を受け止めるボルトをねじ込むのだ。時間が経つにつれ歯根とボルトは一体になり永久歯のようになる。
保険がきかないのはインプラントが医療上不可欠な方法ではないからだ。保険がきく入れ歯法が本来なのだ。私のかかった歯科医はカリフォルニアのUCLAで資格を取得したようだ。保険的には贅沢な入れ歯なのだろう。それを考えると、いわゆる、最先端医療技術を取得するハードルが高いから。それを超えられない医師を守るためにも保険料を高くするのである?                  T.I

2022年5月30日

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