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Column

朝の景色

 歳をとると朝が早くなる。田舎?に住む私の目の前は空が一面広がっている。そのようなところが書斎だからだ。空を見て何となくハワイの空の様な気がした。雲の感じがである。ハワイの定宿であるカハラホテル827号室のベランダから見る空と似た感じがしたのだ。
 その景色は海側でない。住宅が山に向かってせり上がった陸地が3分の2で右側に海が見える。何回か泊って気づいたのは海側の部屋は高い割には一週間も止まると飽きてくるのである。海の景色は全く変わらない。ディテールにも、何もないからだ。
 その広大な緩やかな山に向かった景色は変化がある。私はハワイに行く際に、と言うより旅行には必ずと言っていいほど小型のライカ製の望遠鏡を持っていく。これでディテールを見るのである。たとえば魅力的な住宅のベランダや庭、そして時々そこにかかる虹などを見るのだ。住宅と言ってもその景色は超高級住宅地なので、まあ、夢のようなライフスタイルが見ることが出来るのである。
 そして、思うのだがこのハワイを舞台にした小説を書いてみたいというような欲求が必ず頭をよぎる。そして、その背景にはロバート・ゴダートの「PAST CARING」が思い浮かぶ「千尋の闇」と題されたこの本の舞台はポルトガル領のマディラ島である。それ以来この島になんとか行ってみたいという気が起きた。その代わりと言っては何だが、それ以来、私はマディラワインを買うようになった。
 マディラはヨーロッパ人のハワイのような島である。距離的にはもう少しハワイより近い気がする。ただ、島嶼独特の気候風土はやはりハワイに近い気がしないではない。イギリス人の教師である主人公はここで晩年を暮らした政治家に興味を持つところから小説は始まるのだが、そこに行くきっかけがロンドンで仕事もなくぶらぶらしていた時にマディラ島で観光の仕事をしている友人から誘われたのであった。
 そこで将来を期待された若手政治家がかつて住んでいた別荘を訪れた際に、残されたその写真を見てその政治家が暮らした家に招待された事の実感が湧いてくる。そして、その政治家のまつわるミステリーを歴史の教師である主人公が追うのである。上質なブリテッシュミステリーである。チャーチルが若手政治家として登場したような気がするのでそのあたりの時代と現代が交差する、ノンフィクションミステリーの様な気がしないではない。
 ケンブリッジ大学で歴史を学んだゴダードならではの重厚なミステリーで、彼の小説の歴史の舞台はグーグルマップで確認しながら、ロンドン、マディラ、南アフリカとその背景の実物を確認しながら、読み進むことが出来る面白さがある。

 一度、テレビの旅行案内番組でマディラを紹介したことがあったが、そこで印象に残ったことはミモザの花が象徴的な花であったことだ、そのあたりがハワイとは違うなと漠然と思った。ハワイの方がどことなく非日常的なトロピカルな花が多いような気がしたが、気候風土が違うのかもしれない。
 二つの島の違いは何か、一言で語れないかとネットでマディラの気候を調べると出だしに分かりやすいワードを発見した“常春の島”これだよ!ハワイは常夏の島だ。それにマディラは水温が15度くらいなので遊泳は適さないと書いてある。どおりでミモザが咲く花の島という理屈が分かった。我が家の玄関脇に植木屋さんが植えたミモザの花がそこそこに大きくなり花を咲かせたのが極寒の2月という変わった花であったからだ、それが目立つぐらいに大きくなったころで枯れてしまった。そして、近所で同じくらいの位の大きさのミモザの花がやはりいつの間にかなくなってしまった。多分枯れたのだろう?私の考えでは日本は寒暖の差が大きすぎるのではないか?
 そんなミモザの花がどこかの国では大きなイベントのテーマであった?調べるとフランスであった。ミモザは春を告げる花らしいので恋と関係があるのだろう。そういえば我が家でも2月ごろ咲いていたのでたしかに春を告げてくれていたようだ。そんな時期に咲く花はどこにもなかったので気にはしていなかったが何となく自慢であった。
 今ではそれに代わるハワイの代表的な花のプルメリアが毎年、花をつけてくれている。
今年もようやく若芽が出てきた。しかし日本の冬はかれらには厳しい気がしないではない。
マディラとミモザのつながりの記憶は定かではないがマディラが常春の島だとしたら、何か春に関係があるに違いない。

2日目の朝の景色は曇っている。まだ梅雨も明けていないから仕方がないのだろう。昨夜の予報では、今日は一日雨と言ってはいたが分からない。このあたりは海洋性の気候なので少し違うのだ。車で10分も走れば海にでる。

今日の予定は電子書籍化する本の原稿のチェツクがメインだ。自費出版した本なのだが
結構、修正がある。また、カットの写真等の加工がある。Jpegに変更して、ピクセル数を上げるというような高度な操作が75歳迎えた老人には堪える仕事である。しかし、一応お金を払って読んでくれる読者のためにその額に見合った以上の価値を提供しないといけない。オリジナルは本考に10年近く前に書いたものを編集し直したものであり、もし、デザインやマーケティング、ブランディングを職業にしようとする若者には価値がある本であると自負している。なぜならば、その道の特異な経験と知識から生まれた本だからである。
 このような本は世の中にはないだろう。研究書でもなく、専門書でもなく、このような職業の実戦的啓蒙書とでも言えるのではないか。わたしはこの本はクリエイティブな職業に就きたいと考える若者に是非読んでほしい本であることに自信を持っている、と言うのはクリエイティブなビジネスチャンスとはどのようなものでそれをどうつかむかという普遍的なテーマを扱っているからである。
                                   泉 利治
2021年7月5日

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