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Column

英 語 力

 チェロの練習に毎日2時間を費やし、月に2回のレッスンに費やして6年になる。
しかし、70歳代の人間にいわゆる驚くべき進歩は見られない。そして、と時々思うのがこの人生最後の努力を英語の学習に費やした方が良かったのではないかと思うことである。
 ところで私は自身の英語力のために30年近くAsahi Weekly.読んでいる。それに目を通すのは毎朝の日課になっている。しかし、ランクはグリーン以上には決してならない。そして、生涯でマスターしたいことに英語と微積分を掲げていながらその2つは叶えられそうもないだろう。
 私のいうところの英語力のマスターとは普通の会話力(旅行に行って困らない程度)と英文をそこそこに読めることと、そのそこそことは、たとえば、AWのオレンジレベルの英文を辞書なしで読めること。現在なら差し詰めアメリカの大学のホームページを読めることである。アメリカの大学のホームページはグローバル対応、つまり海外の学生のために難解な書き方をしていないのである。
 私はある大学の未来戦略の立案にかかわっている。その大学は英語に強い大学であり、仕事のメンバーは練達の英語力を持っている。一人はあのハーバート大学を出ている。別にそこでは日本語が堪能?あれば良いのだ、日本語で提案するからだ。しかし、その内容は英語力がなければ書けないものばかりである。正直、ASのブル―レベルの英語力がないとむずかしいかもしれない?
 というのは先にも書いたアメリカの大学のホームページや本国のWikipediaを読まねば書けないものばかりであるからだ。そんな時IoTやAIの御利益に与っているのだろうなと思わざるをえない。理由はグーグル翻訳で読むことが出来るからだ。最近の翻訳レベルが上がったので文意はほぼ問題がない気がしないではない。おかしなところは英文を当たると、どうにか分かってくる。というのは文意が分かればいいからである。後は日本語で提案書を書くことになる。
 しかし、と考えるのはこのチェロに費やした時間を念願の英語に費やしたらどうだったかということである。だが、それでもグーグル翻訳を使ったろうな?なぜならばスピードが求められるからだ英語を読むことより文意を短時間で理解しないといけないからだ。それで済ましている背景にはその後に人生にそんなに英語の必要性はないだろうと思われるからだ。プロジェクトが終われば英語の出番はなくなるといって過言ではない。
 いいところ、原書でシャーロック・ホームズ譚を読めたらいいだろうなと思うくらいで、あの微妙なニュアンスを楽しむには原書にあたることだ。それとワーズワースの詩でも読むくらいが、その後の英語力の必要性だ?
 とはいっても不思議に思うことは英語力に関して歳をとったせいで記憶力や理解力が落ちたという気がしない。理由は簡単である。昔から、若い時から記憶力や理解力が低かったので取り立てて加齢のせいにしなくとも済むからだと思っている。その点で頭の悪い人は得をしているかもしれない。いつでも若い時分の情熱で事にあたり、相応の満足を得ることが出来るからである。そうは言っても必要に迫られてという理由が弱いと長続きしないことは確かである。
 
そんな状況の中でAWを30年も読み続ける理由は何なのかを考えると、英語の勉強になるというのと同じくらい世界の情報を得ることが出来るからである。
見開き2ページの内容に、まずMoviesがある。これは新作映画を紹介しているものなのだが選定基準はASの読者層に合わせた映画を紹介している。前々回は「The Last Full Measure」これらの内容紹介と、その映画の中で使われている象徴的なワンシーンの英語の会話を取り上げている。したがって、読者は内容と共にシズルな現代の英語を知ることが出来る。特に凄いと思うのは、それらの映画紹介のうまさである。私は同じような紹介文をアマゾンプライムのそれと比べるとアマゾンの解説でその映画を面白く紹介しているのに出くわしたことがない。したがって、つまらない映画を勝手に解釈して観る羽目になってしまう。ところがASの映画紹介は読者層を知り尽くしているのだろう。映画館に行ってでも見たい気にさせてしまうくらい上手いのである。
また、それと同じくらい面白いのがTravel。レポーターが世界のあらゆるユニークな場所を紹介するのだが、たとえば前々回は“宮沢賢治の生誕の地を訪ねて”であり、英語で全体の紹介をして、個別に10コマくらいの写真と短い解説を日本語で紹介している。また前回はロサンゼルスのダウンタウンを紹介している。一か所ではなく、漠然とダウンタウンであり、かなりピンポイントで個別にそれらしい場所を紹介するのである。たとえば“アールデコとスペインコロニアル様式の混ざったデザインが特徴的なユニオン駅、また、リトルトウキョウのラーメン店とたこ焼き店などを紹介しているのだが切り口がなんともイイのである。
私の海外旅行はホテルだけを予約して、後は行き当たりばったりだったのでASで紹介されるTravelに一種のデジャブを感じるのかもしれない。

旅は英語学習の強いモチベーションになるだろう。最後にこれまで回った海外をもう一度訪ねてみたい気がしないではない。その際、これまでにない選択肢として自動車旅行があるが相当な冒険になるかな?そこで英語に対するモチベーションに火が付いたらこれはこれで楽しいかもしれない。
                                 泉 利治
2021年3月22日
 

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