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Column

去年は最後にさんざんが?

 日本を大寒波が襲っているという大晦日の夜、二階の暖房が全てとまった。三が日はとてつもない悲惨な日を送らざるをえないと覚悟をした。映画やドラマで見るようなアクシデント寒波に襲われた。信じられる?急いで屋根裏部屋に上がり、デロンギのオイルヒーターの大と小を持っており必要な部屋に置いたが、やはりエアコンの暖房のようにはいかない。即効性がないのである。その上、燃料費が高くつくらしい。したがって、寒い中で幾時間を過ごした。ともかく風呂に入り、体が温まっているうちに床に入りその勢いで朝まで寝られればしめたもの。 
 しかし、2時位に目が覚める。歳をとると眠りが浅くなる。しかし、この夜中に目が覚めた時というのは、実は黄金の寝覚めと言って、値千金のアイデアが出る時間なのである。といっても当面、急いでアイデアを出すというような課題も抱えていない。ということでエアコンの故障のことが頭に浮かぶ、どこが悪いのかあれこれ考えた。
 やはり、黄金の寝覚めか?もしかするとただブレーカーが落ちただけではないのか?
というアイデア!こういう常識的なアクシデントにも機能する黄金の寝覚め?そうに違いない。朝飛び起きてブレーカーを確認すると、案の定。
 二階の全てのエアコンは一つの室外機で動かしているのでそこだけ200V なのである。他と同じ100V なら、すぐにブレーカーが落ちたことがわかる?これまで家のことは全て妻任せだったのでこんなことにも気づかないのである。

 そんなことで元旦を迎える。日本の元旦というのはどういうわけがいつも元旦らしい?雲一つない青空である。それにしても日本の元旦は凄いなと思う。というのはロンドンで何回か元旦を迎えたが太陽を見た記憶がない。いつも雲が立ち込めていた。ロンドン生まれの友人は日本の冬だけは本当に良いとしきりに言っていたことを思い出す。
 鎌倉の三が日は自動車の規制がかかるので全域歩行者天国のようである。私は例年通りに初詣に出かける。まず建長寺である。昨年、ここの開山である蘭渓道隆の本を読んだだけに特別の思いがあった。午前の早い時間だったために元旦の法要を執り行っており、じっくりとその様を見た。国宝の釣鐘の音を初めて聞いたがその釣鐘の表面には蘭渓道隆が銘文を撰しており、関東の鋳物師であった物部重光によって鋳造された。物部氏は有名な高徳院の大仏も手掛けている。「鐘つけば銀杏ちるなり建長寺」と読んだのは夏目漱石らしいが、文豪の俳句にしてはあまりにもお粗末である。
 私はそこにいた坊主に蘭渓道隆師のお墓はどこにあるかを訊いた。坊主は困ったように山を指さしてあの山の方です、と答えたが“しかし一般の方は入ることは出来ません”と付け加えた。いずれお参りをしようと思ってその場を離れた。
 建長寺からいつもの神社である大町の八雲神社に向かうのだが、本来、建長寺から巨福呂山トンネルを抜けて鶴岡八幡宮に出て、そこから海に向かって、大町の八雲神社に行くのがいいのだが、そうすると鶴岡八幡宮への参拝客の群れに巻き込まれてさんざんな目に合うので普通なら少し戻って亀ヶ谷の切通を抜けるのが得策なのでその順路をとるのだが、今回はコロナのお蔭で鶴岡八幡宮は空いているに違いないと思い直し、覚悟を決めて坂道を一気に自転車で駆け下りた。どうだろう?人は数えるほどしかいない。平日のウィークデイより人は少ない。私はゆうゆうと自転車で八幡宮の前を通り過ぎた。車もいないので車道を走り抜けることができた。
 大町の八雲神社の小さな神域も入場制限をしていた。私が今回もここにこだわった理由は「八方除」のお札が欲しかったからで、悪い気を寄せ付けないためである。私の寝室の先に墓地があることが分かったからだ。それでなくとも北側で、少々日当たりが悪いので、あまりいい場所でない上にこの方向に墓地があることが分かったとなると・・・その間に三軒の家はあるが?

 ここから先がオカルトめいた話なのであるが墓地から見て一件目の家に独り者の男性が戸建ての家を作り何年か?住んだあと、人の気配がなくなってしまった。その後十年近く空き家のままになっている。その理由を、昨年、私が町内の世話役をしていた時にその隣の人に聞いたのである。比較的若くして亡くなり、どうも親戚連中もその家にはかかわりたくなかったようで、ほったらかしている。確かに外から見ても家の中の障子等は破れ、荒れた様子が分かる。
そして、それから何年かして、今度はその隣の奥さんが若年性のアルツハイマーで徐々に悪化、現在、完全に療養生活に入ってしまわれた。御主人は早期退職をして面倒をみているようであるが、自宅ではあまり見かけなくなってしまった。要するに墓場に近い家から何らかの異変が起きている。次の次が我が家である。
 そんなことから類推して考えると我が家で墓地に近い場所に寝ていた妻が心臓の病で二回も入院したのも何かあるような気がしないではない。そうこうしているうちに昨年の台風の大雨でその方向にある場所が雨漏りし、妻は結婚をして家を出た娘の部屋で寝るようになった。
 その結果、現在、最も墓地に近いところに寝ているのが私になるのだが、早々にエクソシストのような人から見てもらおうかとも思っている。しかし、当面の防御策として元旦に頂いた「八方除」は唯一の頼りである。当初、今、私が寝ている場所が鬼門にあたると思っていたが実際は私の仕事をしているデスクの位置が北東の鬼門にあたることが分かった。考えてみればここにパソコンもあり、起きている間はここに座して仕事をしているので寝ても覚めても厄にさらされているのである。そんなことから2021年は始まるのだ。
                                   泉 利治
2021年1月11日

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