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Column

北極のかなたへ

 今年最後の慎慮と洞察です。よくもまあ、一年間書き続けたと思うが何人かの人が読んでいてくれると思うとまあ、張り合いが出るものです。
 本考は12月28日にアップされる。今年最後に何を書こうかと思い、チェロの今年最後のレッスンを終えて帰って来た。六時近かったので、夕食の支度が出来ていて、10分もしないで夕食にありつけた。その際、妻が私がいない間に見た、この時期に必ずと言っていいくらい話題になる「世田谷一家殺人事件」を担当した元刑事3人の話が出た。
 犯人推定の話らしく、私は妻の話を聞く前に「犯人は西洋人だよ!」といったら、妻は驚くように「そうらしいのよ!」と言った。話を聞くと、刑事たちは今だから言える裏話のように犯人のDNAから明らかに分かったことを話した。で犯人はヨーロッパ系の遺伝子、それも東欧、もしくはイタリア系の遺伝子とアジア人―韓国人か日本人の遺伝子が発見されたことが担当の元刑事が明かしたということであった。それをこれまで公にできなかった理由はそれまでの捜査や対外的に発信した情報との食い違いが起きて捜査を混乱に至らしめる愚を避けたかった、ためであったらしい。そして、動機は何かというと宮沢さんへの怨恨という、ことであった。それらの話はまさに私が何年か前に推理した通りの話であったことに驚きを禁じ得なかった。
宮沢さんと私は同じ二つの会社を経ているということで警察からも特別な目でみられ、事件発生後10年経っても担当の刑事が我が家を訪れ、事情聴取をされた。というと知らない人は何となく殺伐としたシーンを思い浮かべるだろうが、現実は違って刑事さんは菓子折りを持って話を聞きに来ます。
 動機である、宮沢さんへの怨恨という説は私の推理通りで、その内容もだいたい想像がついたが、その先が私の推理の独自性である。私は犯人?=怨恨を持った人がいわゆる、殺し屋を雇ったと考えているのである。その殺し屋は確かに前記したDNAの持主なのだろうが、犯人が分かりにくいのはそこにある。つまり、この事件の本質は犯人とは誰のことを言っているのかということである。殺しを依頼した人か?それともそれを請け負って実行した人か?したがって、宮沢一家を殺害した犯人だけを追いかけても片手落ちということになる。
 重要なことは真の犯人とは誰かと言うことだが、真実は二人になると思われる。これに関してはこれ以上、私の口から言うことはできない。ただ、以前、担当の刑事に“犯人が西洋人ということは考えられないのですか?”と訊いたことがあった。刑事は口を濁したが、理由は西洋諸国の人物に対する文化的な障害や、政治的な絡みで捜査がしにくいという事情をそこになんとはなく感じたのであった。

 タイトルの「北極のかなたへ」とは私がこの事件を題材にして書いたサスペンス小説である。この本、kindleで読めるようになっているので興味のある方は一読をお薦めしたい。ただ、この本で私が推理したことは依頼を受けた殺人者は完璧なヨーロッパ人であるということ、依頼した人も完璧なヨーロッパ人であるということで、その理由は怨恨ではあるがその理由である発端はナチの大量殺人に絡んでいるなどの展開にしたが、要するに構造的には実際の事件をかなり置き換えているのである。
 今回、この事件が改めてクローズアップされた理由は丁度事件が起きて20年の節目にあるからだろう。多分、犯人は永遠に公にされることはないであろう思われる。その喉に仕えた状態が御嫌な方は是非「北極のかなたへ」を読んで留飲を下げてほしい。という売れない小説のセールスが最後のメッセージになってしまったが、本作は私のロングセラー小説「宗達はじまる」の副テーマの小説で枚数の関係から一作から二つの小説に改変したものである。
 したがって、そのオリジナルを読みたい方は「宗達はじまるオリジナル」の方を読んでいただければ一冊で二冊分の楽しみがあるということです。その上定価もほぼ同じなのでこの「宗達はじまるオリジナル」かなりお得感があります。
 
ここで作家活動のご報告をさせていただくと、今年は「光悦はばたく・地の巻」を書き上げてkindle発売中で、現在、その続きである「光悦はじまる・水の巻」を執筆中です。いろいろと身辺が忙しく筆が進みませんがその理由の一つが歴史的事実との関係で整合性をとらなければならないことに時間がかかっているからなのです。それとやはり800年という時間の中で展開される物語が身の丈を超えていたということもあります。
今、元寇の発端を書いているのですが書いているうちにこの本は本当に面白いのだろうかなどと基本的なことで悩んでいます。そうは言っても書いている本人が調べているうちにだんだんと面白くなり、面倒な資料を苦も無く調べているのだから仕方がありません。
ただ、来年度中に鎌倉時代を抜けて次の時代に行きたいものです。というのは再来年の大河ドラマで鎌倉時代を舞台にしたドラマを三谷幸喜氏が書いているようなので、この時代が注目されそうだからです。売ることを考えると時代が注目した出来事に関連していれば多くの読書家はそのような物語の本を求めるのですね。例のノーベル文学書をもらった作家の本が瞬間的にベストセラーになるそれと同じです。多分、村上さんにノーベル賞をとってほしいと切実に思っている人は出版社の人なのでしょう。したがって、名もない国の名もない作家で本も店頭に並んでいないような作家のノーベル文学賞はあまり歓迎されないと思います。
ともかく、今年も本考を読んでいただき感謝しております。来年は本考が掲載されているブランドワークス研究所のHPを刷新しようと考えています。もう少しビジネスに本腰を入れたものを、と考えております。ただ、先立つ予算がないのでそのあたりの手配が先にあることは確かです。それでは皆さま、良いお年をお迎えください。
                                  泉 利治
2020年12月28日

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