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Column

激しい季節

 私がどんなモノを検索しているのかを何かが記憶して私が興味のありそうな商品を探し出して買いそうな情報を送ってくる。その情報の的確さはその送られてきたもので明らかに忘れていた記憶を甦らせてくれるからである。
 「激しい季節」とは1959年に封切られた、イタリア・フランスの合作映画である。当時私は13歳の中学生であったが一番興味があったものはイタリアやフランスの映画であった。「太陽がいっぱい」、「刑事」、「鉄道員」、「太陽の誘惑」・・・などを封切り館ではなく、二本立て、三本立ての映画館を狙って、学校が終わってからや日曜日に観に行ったものである。この「激しい季節」もその映画の一つであったがタイトルやその映画のポスターの写真からどうも中学生には入りにくい映画だった記憶があり、見たかったが見ることもなく50年近く経ってしまった。
 それがこの度、この映画のDVDが3890円というお知らせが届いた。その写真は当時と同じエレオノラ・ロッシ・ドラゴが裸で男を(これがあのジャン・ルイ・トランティニアンなのだが)抱いている有名なスチールであった。と言っても買う気は起きなかったが見たい気は十分にあった。アマゾンプライムにあったのなら?会員なので見ることができるが?ダメもとでyou-tubeで見られないものかと打ってみたら、なんと見ることができるではないかNHKBSをだれかがアップしたのである。
 この映画いろいろ考えさせられた映画であった。驚くべき事に時代は1943年のイタリアが舞台の戦争未亡人が若い男に恋をする映画であるのだ。つまり、戦時中の映画なのだが当時の日本の状況を曲がりなりにも知っている日本人には同盟国?イタリアの戦争に対する姿勢が読み取れるような映画であった。つまり、戦時中とは思えない普通の生活をしているではないか?たとえば曲がりなりにも日本人ならば戦時中は戦時中にふさわしい服装で生活していた(実際その時代に生きていないので、当時の日本の記録フィルムを見る限り)はずである。ただ、コーヒーが手に入らないなど物資は不足していたようであった。また、夏には若者が集まって海水浴やヨット遊びなどを楽しんでおり、戦時中とは思えない当時の日常的なイタリアなのである。
 イタリアは結構、緩い国なのである?・・・・だから、新型コロナで死者が爆発的に増えたのだな、と考えた。現にこれだけ死者が増えてもイタリア人はマスクもしていないらしい。と、そこから、あの国は三国同盟の中でも一番先に白旗を上げた国なのである。というところまで考えてしまうのはこの年代ならではの思い込みであろうか?
 しかし、この映画のラストの数分は戦時中である現実を教えてくれる。連合国軍の機銃掃射が二人の乗ろうとした汽車を攻撃するのである。エレオノラがそこでその犠牲になった子供の死体を見て泣き叫ぶ、自分の子どもを思い出したのであろう。それを見たトランティニアンが二人の現実に気づき女だけ汽車に乗せて別れるのだが、その際のセリフが未亡人と遊べるだけ遊んで、飽きてしまって別れますというような事が本音なのだろうが、それを感じさせないようにわけわからない、尤もらしいセリフを述べる、汽車に乗ったエレオノラが泣き叫ぶのが何となくイタリア映画ぽいっところであった、フランス男だしな?やりかねないよ。というのは余計な情報を持っている日本人映画愛好家の意見。
 ただ、イタリア女の悲しみや涙は本当にいい、「刑事」のクラウディア・カルディナ―レや「ひまわり」のソフィア・ローレンの涙は本当に胸に迫るものがある。エレオノラ・ロッシ・ドラゴも典型的なイタリア美人であるのでその涙は特別に美しい。
 そういえば「ひまわり」もイタリアの戦争を扱った映画であった。しかし、同じ戦争を扱った映画でもドイツの抒情的なものはみたことがない。ドイツの戦争の主役ヒットラーの存在が空前絶後なので他の物語がかすんでしまうのだろうか?
ただ、アマゾンプライムではドイツに蹂躙された他の国の映画は見る機会はある。先日もノルウェー人のナチスからの脱走映画を観たが、見終わった印象は疲れる映画だ・・!。冬のノルウェーから中立国スエ―デンに逃亡する話なのだが、ともかく凍傷で足の指を失いながらも逃げおおせる話で、極寒のノルウェーの過酷さが、ナチの過酷さに輪をかけて指数関数的にじわじわと観る人を追い込んでくる。
 たしかにノルウェー人とはこんなに辛抱強い国民なのだということはわかるが、同じ脱走劇でも「大脱走」のようなすっきり感は皆無で、この国の国民は本当に辛抱強い国民なのだと思った。それとドイツという国はヨーロッパの他の国民に本当に迷惑をかけたのだなと思ったが同じことが私の周りで起きている?中国や韓国では同じような映画が結構あるに違いない。本タイトルの「激しい季節」とはそのような一時の状態を意味しているのかもしれない。
 最後にもう一つこの映画を観る理由があった。この映画にはジャクリーヌ・ササールが出ていたのだ。こんな俳優を知っている人はほとんどいないかもしれないが、当時、一世を風靡したフランスの美人女優で長い黒い髪(白黒映画なのでそう見えた気がするが)で
「三月生れ」「お嬢さんお手柔らかに」などが記憶に残っているが、残念ながら当時彼女の映画を観る機会がなかったので今回の「激しい季節」が初ということになるが、全く古さを感じさせない女優だなと思った。彼女について調べてみると。彼女が「三月生れ」で着ていたトレンチコートに商機を見出した日本のトレンチコートの老舗の三陽商会がそれを“ササ―ㇽコート”と称して売り出したところ、シーズンで5万着のヒット商品になった。
 たしかに女性がトレンチコートを着ると何とも素敵に見えるがその起源がジャクリーヌ・ササ―ㇽだったということであった。そんなことからファッションにうるさくアパレル会社にいた家人にササ―ㇽコートを知っているかと尋ねたら、知らないとのこと。私が中学生のころ彼女は小学生なので仕方ないか?と思ったものである。
                                    泉利治
2020年3月30日

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