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Column

自己防衛

新年あけましておめでとうございます。
本年も「慎慮と洞察」よろしくお願い申し上げます。

 初頭のテーマとしては物々しいテーマである。本考どのくらいに読まれているのかあまり考えたことはないが、昨年、一度手続きの不備で半月くらい開けなかった際に2名の方から連絡をいただいたのでまるっきりだれも読んでいないということではなさそうなので内心ホッとした次第である。ありがとうございます。
 本テーマの自己防衛とは資産防衛を意味している。今の日本、これからの日本はいかにわれわれの資産を強奪することしか考えていないと心することが大事である。たとえばここ数日、政府は70歳まで働かせることを考えており、年金支給を75歳からすると84%増えるということを言っている。支給をできるだけ先送りしたいと考えているのだ。医療費もそうだ、高齢者の健康保険の負担率を1割から2割に上げようと言っている。
 大は国家レベルの強奪から小は振り込め詐欺のような本当の強奪まで、1200兆円をもっているといわれている個人資産を狙っている。そんなことをやっている上に個人にもっとお金を使わせるにはどうするか?ということを国は真面目に考えているらしい。無責任極まりない以上に全くナンセンスな話だ。
 働くことをやめた高齢者は年金しか入ってこないのだからお金を使う発想もモチベーションもなくなってしまうというのは当然である。そこで国は投資をしろということを言っている。ところがこの投資というものは一種の国民文化というもので日本人には異次元の話なのである。一般的な日本国民の生活の中に投資という発想は全くない。それは一部の専門家、いわゆる投資家と言われる人たちの世界の話であり、いわゆる素人が入れる領域外のものという常識が国民一人ひとりの意識の中にある。
 投資とは一種の博打であり残り少ない人生を支える虎の子をそんなものに晒すことなどは考えられない、というのが一般的な日本人の常識であろう。だから銀行に貯金しているのが一番いいということになる。銀行に預けると安全であり、便利であるからだ。また、昔は銀行に預けて資産を増やすということもあったので、多くの日本人にとって安全な上、資産も増えるという僥倖が忘れられないのだろう。たしかに金利が7%だったり、5%だったりした時代があったのだ。
 貯蓄か?投資か?という発想にはまさに生か?死か?と同じくらいの開きがあるのではないか?一般的に実直な日本国民は絶対に投資などするわけはないというのが私の実感である。
 ところがここに明らかな事実がある。1995年から2018年までの23年間の日本人とアメリカ人の平均的な家計金融資産の比較である。1995年を0として双方を見比べると23年間で日本人は1.5倍、資産を増やしたがアメリカ人は3.5倍増やしたのである。この差は何で生まれたのかを考えることが重要である。この間の国力の差は確かだ、この23年間、日本はバブルが崩壊し、何ら手を打てないまま無為に過ごしてきた“失われた20年”と言われてきた期間である。一方、アメリカはこの間リーマンショックなどの恐慌が再びと思わせるような未曽有の経済危機があった。しかしそれをアメリカは上手く回避した。その理由の詳細が分かるほどの専門知識はないが、ひとつわかることは経済という分野に精通した能力を持った国家であったからである。
 アメリカの凄いところは国を上げて国民を豊かにするにはどうしたら良いかを考える国であるということだ。経済の目的は二つある。一つは価値を生み出すこと、そして国民を豊かにすることである。国民を豊かにすることとは国民の金融資産を増やすことである。具体的にはどういうことか?簡単である!私のようにリタイアした国民の金融資産を増やすことである。
 
資産を増やす方法は二つある。原理的には資本家と労働者の関係と同じ構造である。資本を働かすか、自分が働くかである。リタイアした人とは自分が働けなくなった人のことなので、自分の資本に働いてもらうことになる。
 たとえばリタイアした人の現実として自分の預金通帳を見て感じることは収入が2カ月に一度の年金だけであるということだ。30年くらい前なら1000万円の残高がある人には年に50万円(金利5%時)利息があった。そうしたら、それは消費に回せた。だから、それでいろんな人が潤った。いわばGDPに年金生活者が貢献できたのである。ところが今の政策は逆のことをやっている。消費税10%を考えると人口の多数を占める年金受給者は何も買うことはないだろう。たとえばアメリカ並みにリタイアした人の金融資産を2倍にしたらどうだろうか?もっとお金を使うだろう。韓国との関係が冷え込んで韓国人観光客が減って困ったなどということで四苦八苦するなどということもない。年金生活者が九州旅行をするからである。ところが現状では年金生活者が旅行をするなどの贅沢は許されない。
 鍵は年金生活者の家計を豊かにする方策である。前記したアメリカ人はどのようにして家計を豊かにしたかを考えることである。安全な投資を行うことなのだ。私が考える答えは2つである。一つは戦略的投資として“コア&サテライト投資”もう一つは“ドルコスト平均法投資”である。
前者のコア&サテライト投資はノーベル財団やハーバート大学やエール大学などが行っている投資法で1000万円の資金があるとしたならばそのうちの三分の二は安全な国債や債券などに投資をして、少ないが確実なリターンを獲得し着実に増やす。そして残りの三分の一をリスクは高いが大きなリターンを望める株式などの投資をする。
 後者のドルコスト平均法投資は毎月、株式を決まった金額で購入し続ける投資法で上がっても、下がってもたとえば毎月2万円の株式を10年20年と買い続けるのである。株式が高い時は10株しか買えないが下がった時は20株買える。こうやって長期間買い続けていくと最終的に元金が4倍近くになるのである。
双方とも信頼性のあるパートナーを必要とする資産運用ではあることは確かである。したがって、タンス預金や銀行預金に比べるとリスクは高いかもしれない。しかし、国が考えている姑息な施策に比べるとまだましである。
文化として日本国民はもっと資産形成に対してもっと前向きになるべきなのだ。が、そこが遅れた原因について私は金融機関が正しい消費者教育をしなかったからだと思っている。たとえば先日、生命保険の会社のホームページを見たのだが日本の生命保険会社はがん保険や学資保険などの単品の商品販売だけを目的として紹介しているがアメリカの生命保険会社は顧客をクライアントと呼んでその顧客の人生における資産コンサルタントという立ち位置から考えて、どのような保険が必要かということを説いている。
つまり、日本の保険会社はドラックストアーで市販薬を売っているようなものである。それ比べるとアメリカの保険会社はかかりつけの医者が健康維持という観点から、病気からライフスタイル全般までを見て対応してくれている違いがあるのだ。したがって、アメリカの保険会社の場合は簡単な質問の答えることで自分が買うべき保険は何か?もしくは保険より、良い何かを提案してくれることになる。たとえば自分は今どのくらい借金を抱えているのかなども開示するのでそのあたりを考えたいわゆる保険加入者の将来における資産対応についても考えてくれるのである。そうやって資産形成を考えてくれるので日米の家計金融資産の差が出るのも致し方ない気がしないではない。自動車保険についても調べてみたが、それも同じで要するにアメリカ人のお金に関する投資は自分の未来の人生設計を基本に置いて考えようということなのである。そういうことがアメリカという国の文化であるのだ。この差はどこにあるか考えてハタと思い浮かんだことは!
やはり、アメリカという国は我が家に一台拳銃があるという国なのだ。要するに自分の身を自分が守るしかない国なので自分の未来は自分で考えなければならない国なのだからこうなったのだろう。そう考えるとスエ―デンのような国は自己防衛を必要としない国なのだな?ということがわかる。日本はどちらをめざすのか?しかし、将来そうなるにしても、それまではアメリカ型の防衛策を講じる必要があるかもしれない。
                                  泉利治
2020年1月6日

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