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Column

西洋かぶれ

 私の世代にはこの手の人が多い?と思ったが何ともいえない。どんな世代にも一定の数は存在すのではないか。この起源は夏目漱石の「坊ちゃん」中に出る赤シャツという輩らしいが私はその本を読んだことがないのでWikの解説にとどめておく。しかしよく考えるとこのあたりの起源は文明開化で日本人が西洋を知ることになって、一定数の人が生まれたのだろう。
 私の西洋への憧れは考えてみると、もの心が付いた頃、母と西洋の映画を観に行ったことで芽生えたことがその要因にあることは間違いない。考えてみれば昭和25,6年の頃であるのでかなり進んでいた生活をしていたものである。おかげで十代のころから西洋のものに親しんだし、十代の頃はいわゆる洋画をよく見にいったものである、そして働き始めて、お金を稼ぐようになってまもなく、念願のヨーロッパに行くことになった。それも1か月である。昭和48年であるので当時唯一の国際空港であった羽田から出発した。
 憧れのヨーロッパは今のEUとは違い勢いがあった時代である。私は5つの都市に1週間ずつ滞在して岩倉使節団の団員のように見聞を広めたということになる。信じられないことだが当時,洋行帰りなどと軽口をたたかれる時代であった。したがって日本に帰ってきた時の虚脱感を今でも覚えている。その時、一番欲しかったのはテラス席のあるカフェである。そんなところでコーヒーでも飲んだら、いわゆる一時の虚脱感を押さえられると思ったのだ。パリは特別に多いがそれはヨーロッパの街々のどこにもあった。そんな簡単なことが日本にはなかった。文化の違いの典型と思ったがもしかすると飲食店に関する法規で日本では認められなかったのかもしれない。が、それが出始めたのは定かではないがそれから20年後?くらいではなかったか、先日、横浜美術館に行った際に鎌倉のAMALFIのカフェのテラス席に座り、キンキンに冷えた白ワインを飲みながらそんなことを考えた。
 私は愛飲家ではないが美味しい料理にはお酒があるとイイと思うタイプの人間である。日本料理には熱燗が不可欠であるし、西洋料理にはワインなしには済ませないタイプである。かと言って蘊蓄を語るほどワインにはのめり込んではいない。体質的にお酒が強い方ではないからである。しかし、ほどほどのワインは何とはないリッチな気分にしてくれる。
 AMALFIのカフェでは白ワインだったが、これって何かあるんだよなと20日くらい考えて突然、思い出したのがフラスカティという名前だ。そんなことを考えながら家人と近所のスーパーに出かけた時ワインコーナーに寄ってみた。そうしたら一銘柄置いてある。何となく記憶が少し甦る。イタリアのどこかに出かけた時、事前の旅行案内か何かに冷えたフラスカティが美味しいと書いてあったのでテラス席のランチでフラスカティを注文した。運ばれてきたそれは信じられないくらい美味しかった。その旅行では毎日、ランチではフラスカティを注文したものである。
 そんな記憶が薄れたのは日本に帰って来て長いことイタリアにはご無沙汰だったからだ。また、イタリアは北部のベニスやフィレンツェが中心だったからだ。そして時期は冬が
多かったからか?そんな理由からだろう。したがって、フラスカティというワインにはそんなイタリアの夏の記憶が夏のテラス席で思い出されたのである。
 赤ワインに比べると白ワインは金額に関わらず味が安定しており、裏切られることはない。おしなべておいしいからである。それに比べると赤ワインは自分で買って美味しいものと出会ったことは一度だけである。確かなことは3000円以下のワインは750円のワインも3000円のワインもほとんど同じである。だから私は570円のイタリアのTAVERNA?という値段の割には美味しい赤ワインを飲む。
私の赤ワインの知識のベースはロアルド・ダールの「TASTE」という絶品の小説に触発されて、ボルドーワインを研究したことによって得た知識だけである。その頃はそのボルドーワインがどこの畑の産のものかを調べて買ったものである。勿論、ダールの本の主人公であるシャトー・ブルネール・デュ・クリエは今でも最高の赤と思っている。しかし、それだけでブルゴーニュワインに関しては全く分からず、それならチリワインの方がイイと思う程度なので酷いものである。
ワインが好きな人は騙されたと思ってダールのTASTEを読むことをお薦めしたい。要するにワインの専門家という輩とはどのようなものかというもモノをドラマチックに教えてくれる。論理的にそのワインの所在や年代を解き明かしていく様はこの世界に引きずり込まれる理由がわかる気がする。ともかくワインの世界がいかに西洋人とって奥深いものかを教えてくれる。ダールの本は昭和49年の本であるので45年近く前の話である。
 
私はワインに関して本物の西洋人?より凄い体験をしている。ブランド戦略の専門家としてJTのイタリア料理店チェーン展開に絡むブランド戦略の仕事をした。こんなプロジェクトは後にも先にもない仕事であった。JTがあるレストランチェーンを買収して、そのチェーンを新しいブランド名で展開したいのでそのブランドアイデンティティを開発してほしいという話であった。その頃の私は年に2回くらいヨーロッパにでかけており、持ち前の好奇心からヨーロッパに関する知識欲が旺盛な時だったので、そんなことから本格的な歴史書も読んでいた。
 イタリアンレストランのコンセプト1号店はアークヒルズオープンする、2号店は銀座・・・スケールが大きい話であった。私はそのとき読んでいた中世の商人の手紙の中からその商人のライフスタイルをブランドアイデンティティの中核に据えようと考えて、彼の荘園での生活の歳時記をブランドコンセプトにした。そこでその地方の1年間のイタリア人の食事メニューから料理を選び出し、1年間の店のメニューを中心にしたコンセプトをまとめた。ブランド名は「VALDANO」アルノの谷という意味である。ところが驚いたことにこの店を、京都大丸の8階にある事を知り12月に京都に行くので絶対行くぞ・・・ああ感動!家人も楽しみにしているようだ。
というのはビジネスライクなJTにとってそのイタリアンレストランビジネスは一時の気まぐれだったようで簡単に売ってしまった、したがって、もう過去のものかと思ったのだ・・・
・・・・・次回に続く 泉利治
2019年9月23日

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