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Column

GEの悲劇

GEは生まれた時からエリートカンパニーであった。しかし、今その企業は瀕死に状態である。この企業はどこで間違えたのか?を考えるとエリート特有の落とし穴に落ちたとしか思えない。エリートとは強烈な成功体験によって生まれた集団である。その成功体験ゆえに世界を支配できると確信を持っている。かれらは一時代世界を支配した恐竜のような気がしないではない。
 私はビジネスの世界を見てきた人間としてGEの方法論やその経営哲学を頭の片隅に置いて常に仕事をしてきたと言っていい。ある会社の革新プロジェクトを推進にするにあたってその会社の全役員にジャック・ウェルチの著書を参考書として読んでいただいたくらいであった。
 GEの現在ほど見てもいられない状態は10年前には想像できなかった。何となくGEはコダックのような運命をたどるに違いない。それはこれほどの会社でもやり方ひとつで市場でも、社会でもそのプレゼンスを失うという事である。結果としてこの会社を考えてみると創業者エジソンの100年前の遺産で食べているような会社になってしまうだろう。
ただし、それはコングロマリット企業GEをヨシという意味で言っているのではない。多くの会社は創業者の作った事業が現在の屋台骨になっている。ホンダだって、ソニーだってそうである。GEの場合も現在の企業を支えている事業は電力事業なので結果として、ホンダやソニーと同じである。創業者の創った事業を継承している会社はアイデンティティがしっかりしている場合が多い。GEの問題はアイデンティティの喪失である。?企業の社会的責任が問われる現在、GEの衰退は当然の報いのような気がしないではない。この会社は業績を上げることしか眼中にない会社であったからだ。
自社の社会的存在意義など考えたことがない会社なのではないか。GEが喧伝した有名な経営哲学。業界でNo.1or2以外の事業は全て売り払う・・・選択と集中として有名になった方法だが、そのかいもあり現在、事業が無くなりつつある?何とも皮肉な結果である。創業の事業すら業績が思わしくないと平気で売り払ってしまう。こんな会社にビジネスの神が宿るわけはない。
こんな会社にだれがした?間違いない歴代経営者の中で一人挙げよ言われたら、だれもがかの有名なジヤック・ウェルチをあげるだろう。かれはいい時に辞めた。もう少し残っていたらとんだことになっていた。かれが辞めた後その膨大な退職金が問題になってかなり減額された。辞めた後に何か問題が発覚したからだ。したがって、世間はその処置を当然だろうなという冷ややかな目で眺めた。かれは今のGEに対して何か有益なサジェスチョンを与えることができるのだろうか?

GEを再生する鍵はアイデンティティの構築にあると思う。この会社、自身の存在価値が分からなくなっている。また、今の雇われ社長では周りも本人も会社に対するロイヤルティがないのでうまくいかなかったら簡単に投げ出すであろう。そうすると次は誰か?を考えることになるがこれだけの会社ならヘッドハンターがそんなに優秀でなくともそこそこの人材はハントできる気はする。しかし算数しかできないMBAの社長経験者では好き勝手にやって、だめなら次、そして次という風に社長だけが変わるが経営は変わらないというような状況に陥るだろう。
 GEは本来優秀な経営者を育てる企業内ビジネススクールがある会社としても有名な会社だ。社内に有能な人材はいるに違いない。個人的には2代前のジェフリー・イメルトが良かった気がしないではない。しかし彼は志半ばでGEを去らざるをえなかった。アメリカという国は我慢が足りない国である。結果がでないとすぐに経営者が問題だということになる。GE再生のカギはそのような世論、アメリカの市場文化を変えない限り再生しないのではないか。というのは問題がアイデンティティという少し時間がかかり、業績に反映されにくい分野の問題だからである。
 イメルトが成し遂げた象徴的なことは本来の製造業に戻ることを宣言し実行したことである。リーマンショックでそれまで優等生であった金融部門が多大な赤字を出してGEの屋台骨を揺るがしたからだ。イメルトのその決断も偉かったが、一概にそうともいいきれない気がしないではない。たとえば、金融で開けた大穴は金融でしか穴埋めできないのではないかと思うからである。現にたとえばリーマンショックで資産の三分の一を失ったハーバート大学はいわゆる金融部門を刷新してそこを強化し、それ以前より30%近く資産を増やしたからだ。何を言いたいかというと金融で減らした資産を取り戻すのは金融しかないという事である。
 問題はリーマンショックを予想し対応できなかった金融部門の問題ととらえないといけないのである。よく考えればわかることだが製造業の利益率などは微々たるもので、そこでリーマンショックの穴埋めをするということはそれ以上のリスクを抱えることになるからだ。したがって、あの時の正しいソリューションは明快だ。それは金融部門のスキルやインテリジェンスを刷新することであった。ここでもGEは株主や市場の顔色を窺うというミスをやってしまった。対応策が旧弊の方法である。
 GEのアイデンティティは発明王エジソンが創った。結構、この人我が道を行った人である。この手の人物に多い奇人変人の部類の人であった。晩年は霊界と交信する無線機づくりに没頭したらしい。世間の評判などを気にせずに我が道を行く人なのであるが、いまGEはその精神を見習うべきだろう。もう一つ、GEは売上高や株価などを気にするのではなく
発明王GEになるべきなのである。この会社の真骨頂は“発明“という事である。
 ヒューレードパッカードのコーポレートステートメントは“INVENT”であるが、本来それを名乗るべき会社はGE以外には考えられない。もう一度、企業の原点に還り自社が存在する社会的な役割とは何なのかを考えるべきである。
                                 文責:泉利治
2019年2月11日

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