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Column

天才ヤマガラ

 かなり前にヤマガラについて書いたことがある。相変わらず我が家には2羽のヤマガラが一日中、居ついている。この2羽はもしかすると我が家の庭に架けた巣箱で生れた2羽のような気がしないではない。特徴的なことはその内1羽はよく鳴くのですぐに判る。ただこの2羽は手から餌をとるまでにはいかない、それでも1羽は1メートル内外にまで近づくまでになった。もう1年近くこの状態なのだが手からヒマワリの種を取ることはない。ところが朝一番に唯一手からヒマワリの種を取る天才ヤマガラが来訪する。
 このヤマガラの凄いところは自分が来たことをいわゆる停止飛翔して知らせるのである。
したがって、私はそれを見ると必ず外にある餌箱にヒマワリが入っているかを確かめざるを得なくなる。今朝も茶室のあるシャッターを開けると私の目の前で停止飛翔をして自分であることを知らせたので、私はあわててヒマワリを数個掌に載せて差し出すと、すぐに手にとまりヒマワリを取って目の前の枝にとまり、食べ始めた。
 このヤマガラはもう5年くらい前からいる気がしないではないが、人の手にとまる才能をどこで身につけたものなのだろうか?ということをどのようにマスターするのか、なぜ他のヤマガラはそれができないのか?先天的な能力なのか、後天的な学習で身につけたものなのか? 後天的なものだったらそこには能力差というものがあるに違いない。
 「刷り込み」というのが分かりやすい学習法なのだろうがローレンツの説では孵化直後の数秒らしいのでどうもそれには当てはまらない。もし、刷り込みに1次、2次というのがあったとしたら自分で餌を取り始めた頃の何時間というのがそこに当てはまり、身の危険を顧みずに手にとまってヒマワリを得た体験が功を奏したという経験からだったら成り立つ話である。
 
では、自分の存在を知らせて餌をねだるという行為をどう説明したらよいのか?これは実際、考えると凄い行為である。というのは私のところに来る複数のヤマガラを見分けることができるのは例のよく鳴くヤマガラだけで他の数匹は区別がつかないので、もし、それを承知で自分をアピールしていたとしたら、こちらの能力の限界を知っての行為であり、かなりの高等能力である。
そのヤマガラはそれだけではなく自分ならではの行為をいくつかするのでよくわかるのであるがたとえばブランコのような餌箱の淵に止まって、首を振りながら長い間こちらを覗うのである。それでも気づかないと停止飛翔をする。一度などは、それでも気づかなかった時は私の近くにある窓のそばの物干し竿に止まり鳴いたのである。要するに餌をもらうために自分を知らせるその行為はこちらに状況に合わせ、ヤマガラ自身が判断して最善の方法を取るのである。
ヤマガラの知能が高いことはたとえば食べ物を蓄蔵する習性があることでもわかる。だらしない人間より優れているのである。ただ、それをどのくらい記憶しているのかは定かではない。というのはある時期になると我が家の庭のいたるところでヒマワリの芽が出て花が咲きだすからである。多分、蓄蔵し忘れたヒマワリが芽吹くのである。おかげで、夏から秋にかけてヒマワリの花を楽しめるということはあるのだが、感謝のしるしにそこまで考えているとしたら人間の次に知能が高い動物という勲章が授けられるであろう。
ただいずれにしてもあの一羽のヤマガラだけは天才と言ってもイイのではないかと思う。
様々なことを考え併せた私の結論はやはり先天的なもののような気がしないではない。いわゆる、人間に対して親近能力が高く、その人間の行動や意識に対して学習能力が高いということなのである。ただ、種としてヤマガラはシジュウカラやスズメより親近能力が高いのは確かなことでその二つの種は一度たりとも人間に対して警戒を緩めることはない。
 ヤマガラの寿命は15年前後らしいが、生まれてから15年間我が家が餌場というわけではなく、どうもローテーションと言うかメインテリトリーが入れ替わるらしい。また、その入れ替わりも完全テリトリー制ではなく、時間差テリトリー制も敷いているようなのだ。したがって、例の天才ヤマガラは早朝、朝一番にしか来ない。そして彼が去った後に常連の2羽が来るのである。そのあたりのルールもあるらしい。ただ、思うのはいつもの2羽はその天才ヤマガラの子ということもありうる。したがって、親は子のために安定した餌場を子どもに与えたのである。
 そう考えるとあの2羽は何となく若鳥の兄弟のような気がしないではない。今年の春には私の庭に5羽近い数のヤマガラを見かけたが現在は常連の2羽だけである。その5羽がすべて兄弟としたら、何らかの約束か、身内の会議でこの餌場は現在の2羽に与えられたことになる。そして、早朝その親が様子を見に来て家主である私に挨拶をするということなのだろう。それにしても社会性がある鳥である。
 現在、我が家には18年生きたDAXが死んで以来、もうペットは買うことができない気がして、その代わりを果たしているのがヤマガラなのだ。餌代は年にネットで半年分くらいをまとめ買いして、年間で1万円近くかかるが犬に比べると手も金もかからない。また、旅行に出かける際はペットボトルを利用した長期餌箱を吊るしていくので何日かはかれらの食事は安心である。犬なら一日5000円近く払ってペットホテルに預けるので、それに比べればお金もそんなにかからない。
 今のところ昔のように10日も家を空けることはないので餌は切れることがないが、そうなったらかれらはどう生きていくのか分からない、ただ、違う餌場を探して生きるために努力をするのではないか、ともかく頭がイイ鳥であるからだ。

泉利治

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