ブランドワークス

Column

セレブリティブランド

 “セレブリティ“という音の響き、何とも豊かなイメージが広がるが、それをセレブというと何とも俗っぽい成金的な感じがするものである。私生活では何とも縁遠い話なのだが仕事となるとそんな世界についていろいろと考えを巡らさねばならない。
 とある企業の仕事でセレブリティブランドのブランド戦略を考える仕事をするようになった。真のセレブリティとは私に言わせれば“ダウントンアビー”の世界の人たちの事を言うのではないかと考えている。つまり、オールドマネーを持っている人たちのことである。代々の資産を受け継いで間違いなく未来もセレブリティと呼ばれる人たちである。したがってアストンマーチンを初めて買って乗り回す輩ではないことは確かである。
 いわゆる一攫千金で資産家になったのではなく、代々資産家でその資産を目減りさせずに次の世代に受け継がせるような人たちである。したがって、資産を増やすためのリスク執るようなことは毛頭なく資産を100%に近い形で永遠に持ち続ける知恵を巡らす人たちのことを言っている。一攫千金の資産家も代々の資産家も資産を持っているという点において変わらないが前者は太く短い資産家であり、後者は細く長い資産家の事を言っている。
ただ、後者の資産家は別に貯金をしているだけではなく、資産を増やす運用をしている。
 このあたりのナレッジも欧米が発達しているのはその歴史がそうさせたのだろう。ヨーロッパはあらゆる点で世界のリーダーであったので世界の富はそこに集中した、ローマ帝国の時代から考えると2000年近く世界の富がこの地域に集まったのである。ところがここでは年がら年中戦争が起きて、国の支配者が変わった。お金持ちはその度ごとにその財産を次の為政者から狙われて没収される憂き目に何度となくあったので、そんな背景から大金持ちたちが自分の財産を確実に守ってくれるところ探した。スイスがそのようなニーズに応えましょうということで手を上げた。
 永世中立国というコンセプトはスイスという国のビジネスモデルのコアの部分である。
たとえばプライベートバンクという概念が生まれたのもスイスである。いわゆる王侯貴族の財産を守り増やすための銀行でどんな天変地異が起きても顧客の財産を死守するというミッションを持っている。今ではヨーロッパだけではなく世界中の王侯貴族&成金が利用しているらしい。
 私がセレブリティとしてイメージしたのは前者の本物の王侯貴族である。したがって、オールドマネーのライフスタイルというのが私の手がかりにしようとしているセレブリティブランドのヒントである。そんな折、これも時流なのかなと思ったのが昨日の日本経済新聞日曜版NIKKEI the STYLEにヨーロッパのこのような人たちを紹介する特集が掲載された。
「エシカルな生活」としてである。ethical 「道徳的な生活」とでもいうような生活としてある家族の豊かな生活を紹介している。エシカルな生活か・・・うまく言い当てているなと思い内容を読むとそこにはお金では買えない豊かさのようなものが紹介されている。まあ、それを貫くコンセプトがエシカルということなのだろうが、確かにそうだなとあらためて思った。このあたりに何かヒントがありそうだとの臭いをかぎ分けて世界ブランドになったのがラルフ・ローレンで拙本「デザイン・マーケティング・ブランドの起源」で書いたテーマでもある。
 “エシカルな生活“とは本当にいいものを生涯にわたって、それ以上に代々家族に受け継がれたもので組み立てられた生活の事を言うのではないか。つまり、あらゆるものがそれこそ、日々使うタオルから、毎朝、飲む紅茶のブランドまで先祖代々受け継がれたものを当然のものとして受け継ぐような生活の事を言うのであろう。
 その典型がワラントマークなのではないかと思われる。英国王室御用達と言われるそれらのマークはイギリスのあらゆる分野の商品についている。その基準は英国王室の誰かが愛用しているということで現在はエリザベス女王、夫のフィリップ殿下、息子のチャールズ皇太子の3人なのだが少し前までは女王の母君のエリザベスⅠ世のマークがあり、最高が4つのワラントマークがついていた、記憶ではレンジローバーが唯一私の知っているブランドである。
 我が家で朝食の食卓に並ぶ唯一のワラントマークはテップトリーのジャムである。現在の日本人の食嗜好からいうと少々甘すぎるきらいがないではないが私にとって、これ以上のジャムはない。
すべてのものをワラントマークで占められたら英国王室と同じ生活ができるかもしれないが、それらはすべてハードなもののマークであるのでソフトの部分は遺憾ともしがたい。そのあたりは女王陛下のライフスタイルのような本がイギリスではあるに違いない。英国民の一つの規範なのだから。
 グローバルブランドもあるしそうでないものもあるワラントマーク、いずれにしても比較的高価なものばかりではあるがそのようなものを使い続けることが「エシカルな生活」というのだろうと思う。この考察は何となく仕事の延長線上になってしまったが今では英国御用達ブランドも英国では悲哀を味わっているのではないかと思われる。
 もう何年も前のことだがその一つが15年かそこらで本店の所在が3回も変わりそのたびごとにスケールダウンしている現実を見ているからだ、それらのブランドはそれを愛用するごく限られたお金持ちによって買われてきたブランドなのであるが、そのあたりの経済環境が昔とは違ってしまったのであろう。ただ結論としていえることはエシカルな生活とは経済事情に左右されない生活ということである。最後に先に書いたアストンマーチンはワラントマークを得ているブランドである。

泉利治

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