ブランドワークス

Column

サザビーズ



少なからずSotheby’sのブランドロゴを私の目の黒いうちに私の住まいの近くで見ることになるなどは想像が出来なかった。この屋上看板は横須賀線の戸塚駅の大船寄りのプラットホームに立つと見ることができる。サザビーズは私の憧れの世界のシンボルであった。ロンドンのニューボンドストリートにあるこのオークションハウスに入ってプレヴューなどを見ることができる至福感はたまらない瞬間である。
 サザビーズを知ったのは、というよりきちんと意識したのはジェフリー・アーチャーの出世作「100万ドルを取り返せ」を読んでからだろう。アーチャーは殊のほかサザビーズがお気に入りで彼の小説に何度も登場させている。というよりアーチャーはいわゆる美術品が好きなのであろうサザビーズの他にその近辺にある著名な画廊に小説の登場人物を自由に出入りさせているのだ。それ以来、私はサザビーズでヴィクトリア朝の絵を中心に7点もの絵とフランドル17世紀の木彫のマリア像を購入している。
 今となっては驚くべき事でもないが、ロンドンの定宿でもあるクラリッジスの部屋に私が好きな絵のカタログが取り揃えてあったので何とも不思議な気がしたものだが、私のカードの購入履歴から私の好みにあった書籍類を用意してくれたのであろう。さすが世界一のホテルである。ロンドンの街に精通している方ならご存知であろうがクラリッジスからサザビーズまで5分かそこらでいける距離なのである。
以上の記述をジェフリー・アーチャー風に書いたのだがこれからはいつも視点で書いてみる。この看板はオークションハウスのサザビーズのエクステンション事業である不動産部門の看板である。サザビーズは世界の富裕層のリストを持っている。その無形資産を活かす事業として不動産の仲介ビジネスは額も張るし美味しいビジネスであろう。そんなことを考えていたら3日前の日本経済新聞の日曜版の新しいページ「NEKKEI The STYLE」
でサザビーズ不動産の全紙広告を見つけた。”あなただけの場所を、世界で探す”このヘッドコピーに込められた意味は日本にも欧米型の富裕層が出現したのだと思わせる。
 私の周りにグローバルレベルで住まいを考えている人がいないので想像がつかないが、かつての英国系の会社にはそんな人がいた気がする。当時の会長はロンドンの本社が職場だったので居宅はロンドンだが別荘はイタリアのルッカにあった。社長はやはり週末にベネツィアに出かけていた。当時、彼は別荘ではなくホテルグリッテイパレスを定宿としていた。ロンドンからルッカやベネツィアまで2時間かそこらで行くのだろう。そうなれば、ロンドンに本社がある会社のエグゼクティブならイタリアに別荘を持てないこともない。そういうライフスタイルが伝統なのだ。サザビーズの発想は無理もなくそんな風に展開する図式がみえる。そのようなビジネスが自然なのであろう。したがって、三井のリハウスと競合するとは思えない。
 しかし、週末をそのノリで過ごすことを考えると日本ではどのあたりになるであろうか?ハワイまでは7時間はかかる。グァムは?ネットで調べると3時間45分、少し遠いがいけないことはない。沖縄?無理がなさそうだ。アメリカにあるようなセレブの宅地開発をしたならば無理はなさそうだ・・・そんなことをサザビーズは読んでいるのかな?確かに人間の価値観もグローバル的平均化の流れから行くとそうなるかもしれない。
 しかし、海があるロケーションなら日本は事欠かないだろう。伊豆だって捨てたものではないかもしれない。それ以上に素晴らしいのは湖だ。箱根の芦ノ湖のロケーションは絶品だ。以前、コモ湖に出かけたがそこの素晴らしさに魅了されたし、スイスのレマン湖も素晴らしかった。ザルツカンマーグートの湖畔に立つ狩猟屋敷をホテルにしたシュロス・フィッシェルに何日か滞在したが、湖に向かう急斜面にたった別荘や船着場がある別荘をみると、世界には何でこんなセレブがいるのだろうかと不思議に思えてくる。最近、分かったことは欧州のセレブは一代限りではないのだ。
 セレブと湖の絡みでいうとジュネーブのデ・ヴァ―ジェスというホテルに何日か滞在した時そのホテルの一階にプライベートバンクのオフィスがあったが、今から30年以上も前でプライベートバンキングの意味が分からなかったが、今ならよくわかるようになった。セレブの財産管理を請け負う銀行のことなのだ。多分、10%前後で運用するに違いない。10億円くらいの財産を運用すると1年に1億円のお金が入る計算になる。それを受け継いだ人は親から毎年1億円のお金をもらう計算になる。本人の年収が5千万円ならば1.5億円が年収になる。ベントレーにも乗れるわけだ。サザビーズはそのような人を相手にするようである。ヨーロッパにはこの手の人が多い。また。なぜ、そんな知恵がついたのかは歴史的に戦争が多く財産を守る知恵が命の次に必要とされたからだ。
 最近どういうわけかナチスの蛮行に関する映画を見る機会が多い。そこではどんな金持ちのユダヤ人も財産を奪われてアウシュビッツに送られる。日本で財産を戦争で奪われるというようなことは今までなかった。空襲で家屋が灰塵に帰すというようなことはあったが・・そのようなことに対する対策としてスイス銀行があるのだが。
 サザビーズらしい本来の話がこれを書いている時に耳に入ってきた。レンブランドの真筆が発見されたのだ、競り落とした美術商はレンブラントに造詣が深い人で1900万円で落札したというが、もし売りに出されたら多分、この真筆は70億円は下らないと思われる。そんな話を聞くと我が家の人物画もレンブラントであったらとつい思ってしまう。このポプラ板に描かれた我が家のレンブランドもどきの絵は時代的にはレンブラントの時代に描かれている。そうだ、久しぶりにジェフリー・アーチャーでも読んでみるか

泉利治

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