ブランドワークス

Column

ついていけない

 少なからず私は近未来の予測ができる方法を持っていた。いわゆる経営戦略や事業戦略は5年から10年後の経営環境や事業環境を想定し、その時にクライアントを想定内の状況に置くことが出来る方法である。しかし、ここ数年何となく思うのは私のその方法が間違いなく時代遅れのものでその方法に従うことでクライアントに迷惑をかけるかもしれないという思いに苛まれている。
 私の戦略立案の方法のベースになっているものの一つに3つの競争戦略がある。コストリーダーシップ、差別化、集中化というもので企業の業績が悪くなる場合、そのいずれかの戦略が徹底されていないことによって起きてくる。今までの全ての企業はこのいずれかの競争戦略を意識的に執りながら業績を維持してきた。業績を維持できることでブランドイメージも良くなるのである。
 私がこの方法論を発見してから30年近くは経っているので、確かに使えなくなってくるのは致し方ない。その頃、まことしやかに企業30年説などということが言われていたが、確かに現在、世界を牛耳っている企業は当時考えもしなかった企業ばかりである。よく一夜にして・・・という言葉があるが、それが通じる世界とそうでない世界があり、私の分野ではそれは通じないことぐらいに思っていたが、実際はそうではなかった。一夜にして世界的な大企業が出来てしまうのである。GAFAがいい例である。私の目が黒いうちにそれらの企業は世界的な企業になってしまったのである。
 
今、日本経済新聞の一面に「パンゲアの扉」というシリーズ物の記事が掲載されている。その中で人口476万人のニュージーランドが人工衛星を打ち上げる「宇宙クラブ」に仲間入りをした、という記事があった。私が知っている限りではそのクラブに入るには資金、知識、意欲の3つがなければ成り立たなかった。その中の最大の難関は資金である。今までその世界を牛耳ってきたアメリカとソ連はその国力から生み出される資金がバックボーンあったからその世界を支配できたということだ。ところがそれらの宇宙開発のコストが技術革新で100分の1になってしまったらどのようなことが起きるだろうか?最大の参入障壁であった資金の壁が壁でなくなる。また、知識はネット社会なので自由に取得できる。そうなると意欲さえあれば間違いなくどこの国?というよりだれもがその「宇宙クラブ」に入会できることになるといえる。記事によるとルワンダが人工衛星の実用化を視野に入れていると書いてある。調べてみると「ルワンダの虐殺」が起きて、それが映画にもなったアフリカの小国である。失礼を承知で比喩すれば石器時代にあった国が数年で最先端の国に変身してしまったのである。
 つまり、間違いなく意欲さえあればこの世界は誰にでもチャンスがある世界なのである。
資金はクラウドで集めればいいし、知識はネットで集めればいい。人材もネットで集めることが出来るであろう。フェースブックをみればその人物の才能や価値観が分かる時代なのである。その証拠に本考を読めば私の知力などたちどころに知れてしまう。
意欲と発想か・・・そう考えるとテスラ社が世界のナンバー1の自動車会社になることもかなり現実味があるわけだ。その社長のイーロン・マスクは決していかがわしい山師などではなく間違いなく最先端の企業家なのであろう。なぜならば過去にとらわれない意欲と発想をもっているからである。かれについてWIKを調べてみたら南アフリカの出身と聞いてこれからの時代はアフリカになるのか?
「パンゲアの扉」にAIについて書いてあったがAIは将棋や碁だけの世界かと思っていたがとんでもないことで、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療法をALSの知識がないIT技術者たちがそれまでの知見をAIに機械学習させて1週間後に可能性のある5つの治療法を見つけ出した。ALSの知人がいるので何とか応用してもらえないかと思ってしまうし、あらためて在来のやり方の限界と、「ついてはいけない技術や発想」の凄さに期待を寄せてしまう。
本来、こんな世界はどこ吹く風で生きていける晩年のはずであったが、どういうわけか少なからずそうはいかない状況にある。ともかく、近未来において感謝はされないまでも、そう言えばあの男が10年近く前に言っていたことが嘘ではなかったのだなといわれたいと思うのが人情である。
ではどうするのか?理屈としてはいわゆる私の頭の中にあるOSは変えられないにしても2018年度ヴァージョンなるパラダイムソフトをダウンロードすることなのだろう。今後、そのソフトの上で仕事をするようにすることだ。そうすれば、ともかく体裁として、それなりの専門家らしいことは言えるかもしれない。何年か前にパワーポイントなるソフトを入れてそれで考えをまとめた提案技法をマスターしたようにである。それまでは私が紙の上に鉛筆で図や文字を書いたものをオペレーターがイラストレーターという作画ソフトを使って提案書をつくっていたのである。
もし、頭の中に新しいパラダイムソフトが組み込まれたとしたならば、新聞に書いてあることや様々な新しいビジネス上の見解についても頭と体がついていけるかもしれない。コリン・ウィルソンの表現を借りればクラッチがつながった状態でアクセルが踏めるという事であり、それまではギアをニュートラルにしてアクセルを踏んでいる状態だったのだ。あと3日もすればゴールデンウィークに入るがそのころからある企業の未来戦略を提案しなければならない仕事が入るので、この3日でダウンロードをしたいところだが?

泉利治

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