ブランドワークス

Column

コンサルティングの技法

 私は自分をコンサルタントとして定義していない。しかし、自分の仕事を説明するのが面倒なことと、かなり努力を要するので”いわゆる経営コンサルタントのようなものです”と言う事が多い。確かに経営上の相談にのり、クライアントの要請に助力する仕事をしている点において間違いなく経営コンサルタントといえるであろう。その際に使用する方法や提案の分野が戦略プランニングだったり、デザインだったりするだけなので。
要するにソリューションを提供することになるのだが、このソリューションの結果の蓄積がそのコンサルタントの序列を決めることになる。最近はあらゆる世界でランキング流行りなのでブランドコンサルタントの世界でもランキングがあるのではないかと思い私の分野のランキングがあるのかを調べてみたが、そんな小さな分野のランキングはないようだ。
 例えば世界の大学ランキングなどもよく見かける。私の年代には東京大学や京都大学と聞くと雲上の大学というイメージなのだが一番権威があると言われるTHE(ザ・タイムズ・ハイアー・エデュケーション)で見ると雲上の東京大学は46位、京都大学は74位で一見、上には上があるようだと思い直したが、このランキングで1位がオックスフォード大学、2位がケンブリッジ大学になっている。少しおかしいなと考えたのがこの審査をしているTHEはイギリスの教育専門誌なので何となく評価基準がイギリスの価値観で構成されているのだろうと思われたからだ。というのは同じようなブランドランキングなるものを見てもアメリカの会社の評価になるとアメリカの企業がベストに名を連ねるからだ。ただ企業ランキングの場合は大学などより、どうみても客観性があるので、たとえばインターブランドのブランドランキングでイギリスの会社が1位、2位を占めることはない。
 
本題に戻る。今回のコンサルティングの技法で書きたかったことは、企業再生を図る場合、たとえばSWOT分析でいうところの強みを強化すべきか、弱みを補強すべきかの判断の基準は何かという事である。一般的にこの仕事はまず調査分析から入る。たとえばヒアリングをする。つまり、依頼テーマに関与する人たちの話を聞くのである。この中の話の90%はだいたい問題点の話が多い。10人の話を聞くとその企業の900%の問題点が出る。残りの100%は良い話かというとそうではない。したがって、基本的に問題だらけの会社だなという印象がヒアリングの結果になることが往々にして多くなる。
そうすると何となくコンサルタントとしてはその問題点の解決策を提案することになる。
この問題点というテーマは無数にあるのでコンサルタントにとっては飯の種が無限にあるようなことになる。ゼネラルコンサルタント会社という部類の巨大コンサルタント会社はこのあたりをテリトリーにしている。
 以前、そのような会社出身のコンサルタントがクライアント企業の様々な問題点をニコニコしながら列挙して読み上げるのだが、当人はそれ見ろ!と言わんばかりに説明するがクライアントにしてみれば傷口に塩を擦りつけられるようなものだろう。
ただ、私のようなほぼ個人商店のようなコンサルタントにとってその手法を取るといつになっても終わらない、という事になり、いつになっても成果は出ないということになる。しかし、この問題点をほっておいていいものだろうか?と考えるのは当然で、それをほっておくのも何となく無責任なコンサルタントの感じがする。あとはそのコンサルタントの価値観や生き方の違いで判断せざるを得ないかなとも思う。
 私などはクライアント企業の誰もが分かっている問題点をこれでもかこれでもかと指摘するのはどうも性に合わない。それに問題解決にじかに取り組むとなると私一人ではどうにもならない。また、そんな一つ一つの問題点を解決するという部分最適を達成してもいつになっても解決しない気がするからだ。
以前、ある企業の仕事を依頼された。その理由はその依頼をした事業部の依頼者が今やっているコンサルタントのやりかたがおかしいと感じたからだった。そのコンサルタントのやり方は、事業の問題点を列挙して、その問題を解決するのは社員の一人ひとりだから、そのコンサルタントが全社員に配布した「戦略ノート」なるものにその日に問題解決を試みた記録を毎日書く、それを上司があとでチェックするというやり方だった。
ところが私に依頼してきた担当者曰く、毎日書くという事が仕事になってしまい、お蔭で本来やるべき仕事が疎かになってしまい、解決どころではないという事が現実的な問題になった。私がその戦略ノートを見た限り、それは精緻に問題点が記載されており、事細かに解決の道筋が記載されており、確かに論理的には見事な構造であった。
 私は様々な点から分析し直して、その会社が向かうべき方向性を戦略コンセプトとして掲げ、それを達成するための目標を一つ掲げた。そこに至るまでの道筋はその会社のそれぞれの担当者が創って下さい。という注文を付けた。私に言わせれば問題点を解決してどんな会社になるのかのゴールが誰も分かっていないということが問題の原点だからである。私の提案が採用されたことで以前のコンサルタントの契約は終了した。私はその功績で新しい顧客を獲得したことになるのだが、その戦略の正しさが証明されるまで8年の歳月を要した。
 組織も人間と同じようで向かうべき目標に邁進しているときは体も精神も、同期して機能するものなのである。私は運よくこのような顧客のポジティブな面に光を当てることによってクライアントに喜んでもらえる方法論を使って仕事をすることが出来る仕合わせなコンサルタントといえるかもしれない。これは自分の性格にマッチするコンサルティングの技法を採用できたことによる結果なのであろう。なぜならば問題点を列挙することに喜びを見出すコンサルタントもいるからだ。そんな性格や価値観がコンサルティングの技法を形づくっているのである。

泉利治

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