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Column

トランプ嫌い

 11月20日にこの原稿を書いている。今日は特別の日というわけではないが、あえて言うならばトランプ大統領の就任、一周年という記念すべき日である。これを記念してかどうかわからないが一昨日、フェイクニュース大賞というのをトランプ大統領が発表した。その栄えある第一位をとったのはアメリカにおける高名な経済学者ポール・クルーグマン氏である。氏のコラムはニューヨークタイムズに掲載されたものだが、運よく朝日新聞紙上でも読むことが出来た。
 私はこの偏屈なノーベル賞経済学者のコラムを毎週呆れて読んでいたのだが、フェイクかどうかを別にして、知的にトランプ大統領への罵詈雑言を書いているという感じで、節操がない気がしたものである。私はこのクルーグマン氏の論説を彼がまったく日本で知られていない頃、ハーバートビジネスレビューで何回か読んだのだが他の執筆者たとえば、ドラッガー、ポーター、マンデル、アーカーなどとは明らかに違う異質な学者だという印象を抱かせた。一言でいうと嫌な奴だなというのが第一印象であった。ビジネス論文で普通はそんな気を起させる執筆者はいないのだが、このクルーグマン氏だけは異質な学者であった。だからどんな実績でノーベル賞をもらうまでになったのか、その理由を知るには私の能力を超えていた。
 クルーグマン氏がフェイクニュース大賞を受賞した理由は、トランプ大統領の下では決して市場は回復しないという予測に対してなのだが、考えてみればその理由を経済学の見地からというより好き嫌いという見地からアカデミックに一年間にわたり書き続けたクルーグマン氏を讃えたものだったのだ。確かにあれを読む限り尋常ではない嫌悪をこれだけ持続させるのは尋常な精神ではないと思った。あれはもう一種のエコノミックストーカー?であると思わせる内容である。
 クルーグマン氏のコラムは多くのトランプ嫌いのアメリカ人を喜ばせたであろうことは予測できた。トランプ嫌いにとって読んでいてスカッとする読後感があったのだろう。あのノーベル賞をもらった人物がこき下ろしているからだ。トランプ嫌いの強力な後ろ盾である。そこに価値があったからニューヨークタイムズは多分、高額な原稿料を払ったのだろう。また、クルーグマン氏はそれを承知でトランプ大統領のやることなすことに氏ならではの批評を加えたのだろう。普通の経済学者なら、それもノーベル賞まで受賞してしまうとある程度体裁を考えるのだがこのエキセントリックな経済学者はそんなことにはお構いなしである。いずれにしてもノーベル賞に匹敵する?フェイクニュース大賞の受賞を心から祝したい。

 トランプ大統領の一年、これもフェイクかもしれないが一年は持たないだろうと言われたが一年、持ったのである。いろいろ言われるトランプ大統領だが彼が世界のリーダーたるアメリカの地位を放棄した姿勢をとやかく言うが、歴史を紐解くとアメリカが世界のリーダーたる地位を意識したのは第一次大戦以降、20世紀に入ってからなのである。それまでは英国をはじめとするヨーロッパの国々がリーダーシップをとっていたので、その愚にトランプ大統領気づいただけなのではないかと思っている。
 ただ、文化としてアメリカはリーダーシップが好きな国なのでアメリカ人は反対しているという構造がある気がしている。日本ではこんなことは起こらないだろうと思う、日本人はリーダーシップというよりその反対の顔のない集団が一丸となって事を成し遂げるという事が好きなのである。ただ、日本はその文化を変えようとして躍起になっているが、アメリカはその逆になってしまった?
 トランプ大統領の言わんとしていることは単純でリーダーシップというより、政治的リーダーシップは何の得にもならないという事なのではないか?確かにアメリカはよその国で戦争をしてどれだけ無駄遣いをしたか?普通の感覚で考えるとそういうことになる。そう考えるといたってトランプ大統領の考えは浪花節である。最もアメリカ人らしい(と考えている)ラストベルトの白人労働者に手を差し伸べようとしている政策を遂行しようとしているからだ。その点で超現実的な政治家でその対極は前任者のオバマ大統領である。しかし、一部の識者が語るように政治の理想ばかりで何もできなかったオバマ氏の反動がトランプ大統領を生んだことも間違いない。なぜならば本来、ラストベルトの住人たちはオバマ氏の安定した支持基盤だったからだ。
 私はアメリカのマスコミも反トランプ派の人たちも第二次大戦後に築き上げた世界のリーダーアメリカという幻想にあまりにも捉えられすぎていると思っている。歴史的に世界のリーダーになった国のリーダーになった背景を考えると、最初は軍事力であった。ローマ帝国然り、モンゴル帝国然り、ナポレオンのフランス然りである。ところが軍事&戦争という方法が世界を支配するにはあまりいい方法ではないと気づき始めて、それが経済に移ってきた。この方法論はあまり効率が良い方法ではないとわかったからだ。ただ、北朝鮮のような馬鹿な国がやはり軍事が!と思ってはいるが。
 その次のリーダーシップの方法として出てきたのが経済力である。それは経済的に豊かな国が経済力を梃子に世界を支配してきたのだ。産業革命で豊かになったイギリスであり、新産業革命をやってのけたアメリカである。実はその間にドイツが同様の産業革命で経済力をつけて世界制覇を企てた。
 多くのアメリカ人と世界の識者がトランプに期待しているのはその延長線上にあると思っている。しかし、現在、経済力がある国が世界のリーダーシップをとる時代が終わろうとしているのである。では何か?私は情報創造力がある国がリーダーシップを取るという事である。こんな時に私が考えるのがコンピューター世界である。現状のパラダイムは巨大なメインフレームコンピューターが世界を動かすという構造であるである。IBMはそんな世界を描いていた。だからあの会社は今、潰れかけているのである。個々のパソコンが優秀になってネットワークの世界でそれ以上の力を持てるようになったのだ。この構造がこれからの世界の構造になる。その証拠にG7よりG20の方が注目されるし、影響力がある。トランプ大統領はそのパラダイムの愚を直感的に知ったのではないか?としたら世界が考えているより彼は数段優れていることになる・・・まさか?
という皮肉な現象がいま世界で起きつつある。このいい加減な予測不可能な動向?これってAIで何とかできるのだろうか?私はいつになってもシンギュラリティは来ない気がするが。

泉利治

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