ブランドワークス

Column

大学モデル

私の経営戦略の基本はその企業がベストな経営を維持できる企業モデルを特定し、それに近づける戦略を構築することで徐々に経営環境を良好にしていくという方法論をとる。ベストな経営環境ができると企業ブランド価値も高まるからだ。したがって、それがブランド戦略という事になるのである。企業モデルの基本はフルライン戦略、モノライン戦略×プレミアム戦略、低価格戦略の4つである。最近のトレンドはプレミアム・モノライン戦略である。世界一の企業のアップルがその好例である。一つのプロダクトで世界を制することが出来たのは世界市場を相手にするからである。その逆を行くフルライン戦略は分が悪い、GEなどはその典型である。コングロマリット・ディスカウントなどと呼ばれて高業績でも自動的にディスカウントされてしまうらしい。
 そんなことからどんな業界でも、まず当該業界の企業モデルを特定することが始まりになる。そんなことから大学のプロジェクトに関しても、あまり考えもせずに切り込んだ。大学の場合もフルラインの大学とは学部の数がまず多い。東京大学は文系、理系、医系といわゆる社会的なインフラに関わる人材の教育全般に対して教育をすることが出来る。
私のモデル特定の戦略法はどこでも通用するという事で大学のプロジェクトに取り組んだ。ひと昔前なら教育はビジネスとは異なった判断基準で判断されるし、業績などは二の次という事だが、昨今、大学も企業経営と同じ視点で見ることの重要性が取り正されて、私のようなビジネス畑のコンサルタントもモノをいえる時代になってきたのである。というのは優れた教育をするには基本的には潤沢な資金が必要だからである。つまり、大学の経営環境の良し悪しが優れた大学かどうかを判断する目安になってきたのである。ますます、企業経営に似てきたのである。
 ところが大学の場合一筋縄ではいかない。以上の判断で企業と同じようにとらえることが出来るのは私立大学だけであり、日本の著名な大学の多くは民営ではなく、国営などの公営の大学でありわれわれの税金が投入されるので一般的な企業経営感覚は必要とはされてない。それゆえか日本の大学は世界の大学に比べて劣っていることが分かって、国立大学の法人化が進められた。ともかく私立大学のような経営努力を強いられるようになったのは遅ればせながらだが良い兆候である。
 
 大学の戦略でも私の方法論は変わらず、めざすべき大学像を戦略的に導き出し、あらゆる活動をその一点にフォーカスして行動することなのだが、そこでのポイントは「めざすべき企業像ならぬ大学像」をどのようにしてつくり上げるかにある。そして、それを全員に納得してもらい、各自の仕事をつくりかえてもらい、その戦略でサクセスストーリーを積み上げて、その戦略の賛同者を増やし大きな力にするのである。少なからず私はその方法論でいくつかのサクセスストーリーをつくり上げてきた。
 しかし、全員をインボルブするようなめざすべき大学像のようなものをつくり上げるのは至難の業だ。ただ、時代は私の戦略理論が通じるような時代になってきたのは助かる、というのは「総合文化企業をめざす」とか「みんなに愛される市民企業」というような捉えどころのない企業像の無意味さを多くの企業は学習してきたからである。カゴメの「トマトと野菜のカンパニー」やUCCの「The Coffee Company」のような事業のドライバーになるような企業コンセプトが求められるのである。
 分かりやすい事例として挙げたこの二つは二つの要件を満たしていた。一つは当該企業のコアコンピタンスそのものであるということ、そして時代の流れを先取りしているという二つである。「トマトと野菜のカンパニー」は日常の食の質を高めて、健康になるという時代の流れを上手くキャッチした。トマトも野菜も時代が求めたものであり、そこに企業存在の拠り所をおいていたカゴメにとって、うちの会社こそ世の中が求めているという自負心に火をつけたのではないか。と、言うのはこのコンセプトを打ち出すまでカゴメは総合食品企業をめざしていたからである。したがって、実際は物凄い事業転換をしたのである。
 UCCも同じようなことがあった。今でこそコーヒーは世界のネスレが企業経営の柱においており。コーヒーだけが成長産業と言われるようになったが、このあたりの事業機会を創ったのはスターバックスである。少し前まではコーヒー事業にこれだけの可能性があるとは誰も思っておらず、インスタントコーヒーで済ませていた時代だったからだ。UCCはスターバックスが日本に第一号店舗を出した時にこのコンセプトを打ち出した。本来、レギュラーコーヒーの伝道師を自負していたUCCの自負心がスターバックスのその後の発展を予測できたのであろう。
 
 大学でも同じ法則が成り立つかもしれない?そうは言ってもこのあたりがカゴメやUCCのような企業とは少し違うところで、日本の大学の多くは際立った特徴、強みがないのである。たとえば人格教育に優れた大学?というようなコンセプトが成り立つであろうか?・・・・そんなこんなで逡巡している時に大学には5つのモデルがあるという事が分かった。①研究大学②大学院大学③総合大学④教養カレッジ⑤二年制カレッジの5つである。大学世界ランキングの上位に入るような大学はほとんどが①の研究大学でこの大学の出身者はノーベル賞の受賞者も多く、資金も潤沢で、立派な教授陣が控えているので世界中の優秀な頭脳が集まってくる。わが東大もその末席を汚すものなのだろうが本当に末席であるのが恥ずかしいくらいである。
 その中の知られたところではハーバート大学、プリンストン大学などがある。よく考えると企業に比べると安定している。この二つの大学は企業でいうとGEやIBMに近い存在のような気がしないではないが彼らほど悲哀を舐めていない。業界特質なのか?戦略が巧みなのか?

泉利治

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