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Column

東芝とGE

GEになれなかった東芝という記事が日経ニュースメールで配信されたので開いてみると有料の講演なので興ざめしたが、あまりにも分かりやすい話なので興味がわいた。私は東芝の仕事を何回かしたことがあった。その頃はまだ、東芝は元気な頃で昨今のような状態になるなど誰しも想像が出来ない時代であった。
 いくつかの事業部の仕事をした記憶があるが、一番スマートだったのは医療チームからの仕事であった。CTスキャナーのネーミングシステムの依頼でネーミングとシステムを提案した。担当者はアウトプットのイメージとゴールを持っていたようだったのでわれわれを上手くハンドリングして双方満足いく結果を出してプロジェクトは終了した。そのプロジェクトは海外の市場向けのブランド開発だったの厳しい商標チェツクをクリアした結果、大きな売上結びついた。今回の東芝の問題でいまでも医療部門は黒字を出している部門と聞いたが、当時の印象からすると当然のような気がした。
 その反対だったのはパソコン関連のプロジェクトであった。どんな内容だったか詳細は忘れてしまったが、スタッフの一人はわれわれのような外部のコンサルが入るのが気にいらなかったようで提案するものに何かとケチを付けられた。挙句の果ては同じ課題を自分もやってのけて、自分の方がいい提案だというようなことをプロジェクト進行中にやり始めた。考えてみれば随分と無駄なことをやっているプロジェクトであった。今から考えるとノートパソコンを世界で最初に売り出し、その分野では世界一のシェアを持ったことがある東芝がMac,Thinkpad,VAIOなどの台頭でその地位を脅かされた時期だったのかもしれない。何となく組織全体がぎくしゃくしていた気がしないではない。そのときは担当の副社長のヒアリングをしたり、大きなプロジェクトだったが明確な解で出ないで終わった記憶がある。新しい競争環境に手を打てない組織の焦りのような中で進んだプロジェクトであり、何か殺伐としたプロジェクトということくらいしか覚えていない。
 ただ、その責任の一端は私にあった気がしないではなかった。いわゆるクリック&モルタルと言う言い方をすると、私はモルタルのプロジェクトは得意だがクリックのプロジェクトはどうも分からない傾向があった。ようするにビジネスの根本がこの二つは全く異なるところがあった?パソコンを売るのとトマトジュースを売るのでは価格やカテゴリーを超えた根本的な違いがあるのだ。
 そんなあるころから私の下にクリックが得意なプランナーがついた。私より20歳近く若いプランナーであった。その後、わたしはクリック関連のプロジェクトは彼にまかせることにした。何か月かして彼のプロジェクトが進まないことが多くなった。プランニング部門の責任者は私なので何人かのメンバーから話を聞くと提案が弱いということでクライアントが満足していないことが分かってきた。
 私はかれの提案したものを再チェツクし彼の話を聞いてみた。何回か話を聞くうちになるほどと思った。たしかに提案が弱いというより提案がないということなのだ。要するにこんなことなのだ、たとえば英語の企画書を書かなければならないので英語のできる人に企画書を書いてもらったのはいいが、その人はただ英語が出来るフツーの人だったのでそれは企画でも何でもないことが露呈したのである。そのクリックのプロジェクトは私が入って何となく治まった気がしたがクライアントはどう思ったかはわからない。あまり恰好のいい話ではなかった。
 新しい時代のビジネスのやり方についていけないことは往々にある。私のクリックのプロジェクトもそうだが東芝の不祥事のこともそんな気がしないではない。東芝のようなグローバル企業は同じようなグローバル企業と比較される。そうすると同じくらいの業績を上げなければならない。ところがクリックビジネスの利益構造とモルタルビジネスの利益構造は根本的に異なる。東芝の問題はその帳尻を粉飾決算で逃げ切ろうとしたところにあるのだ。まずのその選択は恥ずべき行為だ。日本の製造業にしては信じがたい方法論を選択した。しかし、分からないではない企業実態を知っていればこその悲しい選択だったのかもしれない。3人の社長は魔の結託をした。
 同じ状況に陥ってまだ先の見えない企業にGEがある。GEも業績が芳しくない。株価が低迷している。一時期危なくなった。社長のジェフ・イメルトは金融ビジネスから撤退した。金融ビジネスを大きくして最大の業績を創り出したのは前任者のジャック・ウェルチだ。イメルトは業績を安定させるために投機的な金融ビジネスからの撤退を宣言し、製造業に逆戻りした。しかし、歴史的な高業績企業のGEのプライドを満足させるには、モルタル的製造業では不可能である。
 そうこうしているうちに本日の6月13日の朝刊にGEのイメルトが退任するという記事が載った。かれは16年間GEのトップとして采配を振るったが2009年にはリーマンショックで株価は四分の一までに落ちた。しかし、彼はV字回復を成し遂げた。だが彼が受け継いだ時の株価をクリアできなかった。比較するのは何だが彼は正統派の手法でGEを回復させている途中であった。かれを辞めさせたのは物言う株主という存在らしい。たしかにGEの株価をそれまでの数字にもっていくには現在のビジネス構造では無理な気がしないではない。グーグルやアマゾンなどのようなビジネスモデルと比べると質が違うからである。
 GEは優れた社員教育システムがあり、その学校を卒業した人はあらゆる企業の経営者を務められるくらいのレベルにまで教育してくれるということで有名な企業学校なのだが、そこのカリキュラムにITを教える科目はあるのだろうか?いずれにしても社員の質が違うことは確かなのである。私は東芝の不祥事を知った時に最初に感じたことはあの三人の企業人は東芝をハンドリングするにはあまりにも能力が低すぎた。ジェフ・イメルトは20年社長をやる予定ではあったようだが、業績不振から16年で辞めざるを得なかった。それでも東芝のあの3人に比べるべくもない。

泉利治

 

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