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Column

EU離脱

 今、ヨーロッパが揺れている。本来、こんなことは遠い日本にいるわれわれには関係ないことでフツーの人にはまさに対岸の火事である。ただ、私の場合その状況が若干違っていた。大きな理由は投資信託でもっていた欧州の株式が一向にさえなかったからだ、それと大好きな以上に尊敬していた英国の政治そのものが期待を裏切っていることである。
 理由は簡単である、キャメロン前首相が最悪の国民投票を実施したからである。というのはこの国の国民はそんなに賢明な判断ができる国民ではないからだ。イギリスという国は古来、聡明なエリートによって運営されてきたのであって、国民の判断に委ねられて国家が運営されてきたのではないからである。したがって、今回の件で多くの識者が英国のエリートの無能さが露呈されたといっているがその本質はそのような国家の真実が他の民主主義国家とは違っているのに民主主義の意思決定の切り札の国民投票に頼ったことでこんがらかったことになってしまったのである。したがって、その判断をしたキャメロン前首相の無知な判断がこの状況を作り出したとしか思えない。
 今回の件がどうなるか分からないがこの国はこれを期に昔、言われた落日の英国という看板を再び背負うことになるのではないかと思われる。その時、今の英国民は初めて英国の本質を学ぶのではないか、しかし、最悪のケースとしてこの国は一つの国家ではないのでこれを機にスコットランドなどが独立してしまうかもしれない、そうするとますます国力が絶えてしまうのではないかと思われる。
 記憶の中に、そう言えば英国がEUに加盟する際ももめたような気がしている。調べるとある程度の偶然から英国がEUに参加することになり、英国はそれでもポンドを維持するとか特別の待遇で参加することになったのだが、その辺りにフランスなどのEU推進派は面白くなかったようである。英国のわがままととらえており、元来仲の悪いフランスは今回の件でも強硬に英国を攻撃しているようである。
 
私は英国の離脱賛成派である。そもそも、英国がEUに加盟するといっていた頃から心情的に何か違うなと思っていたからだ。ヨーロッパにはスイスのようにEUに加盟していない豊かな国はあるではない?と、それを乗り越えるのが英国らしさであると思ったからである。規模が違うということかもしれないが、物理的にも英国は島国であり条件的にはスイスより独立していてもおかしくない気がしないではない。
 現在の英国の混迷を、混迷足らしめているのは基本的に経済の事情のみである。英国はEUに加盟していない前提で国家運営のリスクを過大に考えすぎているに過ぎないのではないか。しかしこうなった以上この状況を天運とらえるしかないのである。世の中の状況を見ればわかることだがEUに加盟しているリスクもかなりある、そこに安穏としているより、新しい国家の枠組みの中で新しい政治体制を考える時期なのではないか、新しい国家体制を創り上げることの方がよほど英国のアイデンティティにふさわしい。
 私の国家論などあまり価値がない気がしないではないが仮に国家企業論と言い換えると幾分私の土俵に乗ってくる。世界の国家を支えている哲学は基本的に国家企業論である。
デジタル化が進むと国家運営の難易度はも企業と変わらなくなり、ことによっては国家より難易度が高い場合が多い、韓国という国よりもサムスンの方がスケールは数段大きいし、難易度が高い気がしないではない。また、スイスよりネスレの方が数段大きい。だいたい、EUに加盟しているアドバンテージはどのくらいあって、不可欠なものなのであろうか?もしかするとVISAに加盟していないお店のようなもの程度ではないのではないか?それならVISA以外のカード会社の傘下に入ればいいだけである。
 離脱したら英国は当面辛いだろうがEUがすり寄ってくるような国にすることのほうがよりクリエイティブで英国らしい。生粋の英国人ならばフランスにすり寄って、顔色をうかがうような英国は耐えられないであろう。そのようなことが経済的利得に取って代わられるというのが誇りを失った今の英国の悲劇なのではないかと思う。英国はこれまでの歴史からいうとドイツなどより、敬意の念を抱かれている。英国にお世話になった国はたくさんあるからだ。

 EU離脱の混乱は世界をやきもきさせており、英国への尊崇の念を失わさせているような気がしないではないが、歴史的に見ればこの混乱こそ英国ならではの国家的なプロセスなのである。多くの英国人以外の国の人々は今回の離脱に関した英国の姿はまさに“混乱”と思っているが英国の知識人たちは決して混乱とは思っていなのではないか・・・?つまりこの混乱というプロセスこそが英国を英国たらしめていると考えている節があるのだ。
 1832年の英国のおける選挙法改革は英国の主権者が貴族地主階級から富裕な商工階級に移った画期的な改革であった。しかしその時の商工階級は義務教育の普及にことごとく反対していた、つまり、人間に教育を与えると経営者のいうことを聞かず労働意欲が減退するので良いことは何もない、したがって、子どもにどんな教育を与えるのかは親が判断すべき事で国家が義務教育と称して強制すべき事ではないというような意見が主流であったのだ。当然の帰結としてその葛藤は一時代の英国を混乱に貶めたことは何となく想像できる。
 今回のEU離脱と同じようなことは成熟した他国では起こりえないかもしれない。しかし、歴史が示すところではその後、英国はこの混乱を糧として優れた合意形成をして国家として一皮むけてくるのである。したがって、当の英国は他国がやきもきしているほど今回のEU離脱の混乱をやきもきしていないと思われる。この混乱こそが英国の知慧であり、方法なのだと思っているに違いない。
 私の結論はさらに過激で英国がEUを離脱して、真の独立を成し遂げてかつての大英帝国を再構築してもらいたいと思っている。私にしてみれば今から40年も以前の貨幣制度に復活してもらいたいと思っているくらいなのであるからだ。1ポンドは20シリング、1シリングは12ペンスという不便な貨幣単位。あのような不便なことを厳然と守りぬくことが本来の英国らしさと思っているからである。
                                文責:泉利治
2019年4月22日

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