誰でも、何らかのお気に入りというモノがある。本タイトル見て、映画のタイトルを思い浮かべたとすると、かなりの映画通である。
これはアル・パチーノが主演した、確か彼がこの作品で主演男優賞をいただいた映画である。Scent of a Womanが原題なのでさしずめ「女の香り」と言うような意味でこのかかわりがいわば、サブテーマになっている。つまり主人公は盲目の退役将校でかつて、ジョンソン大統領の側近を務めた人物が、愚かな事故で視力を失い、おかげでひっそりと親戚の家の一部に間借りしている、まあ、いわば偏屈な盲人が主人公の映画なのだ。ただ、能力だけは盲目になっても変わらないが、それが災いし鬱積した毎日を送っていた。その男が間借りしている親戚の若い家族が旅行に出かける隙を狙って、彼は人生の想い出の地である、ニューヨークに旅立つ映画なのだ。
親戚の若い家族が出かける際に、盲目の叔父であるかれに付き添いのバイトを付ける。近所の名門校ベアード高校の学生である。何日かで300ドルのお手当と言うから悪くないのだろう。学生は盲目の元将校に何日か付き添っていればいいと高を括っていたが、実は盲目の将校の最後の死出の旅の付き添いなどと言うとんでもないバイトだったのであった。そんなわけで彼は軍人年金の残金を全て持って最後の旅でニューヨークに旅立つのであった。
この映画が記憶に残り、DVDまで買ったのは、その象徴的なシーンのタンゴを踊る、その当日、私はニューヨークにいてそのホテルに入ろうとしたが入り口に映画撮影のためラウンジは利用できません!!の看板を見て諦めた思い出があるからだ。
その後、何年かしてすっかり忘れていたその時のホテルでの撮影の映画がアル・パチーノ主演のScent of a Womanであることが分かり、DVDを買って観たということからであった。
そのタンゴを踊るシーンはいつでもユーチューブで見られるくらい有名なシーンになっている。しかし、この映画のクライマックスは何と言っても全校生徒が出席して開催された総会の場でアル・パチーノがぶちかます弁論の小気味よさであろう。ハーバート大学と関係が深い名門校と言うからそのようなモデル校を想定していたのだろう。
この映画でアル・パチーノはアカデミー主演男優賞を受賞したといわれるが、あの最後のスピーチが何とも壮絶だからだろう。アメリカ社会や教育事情を知らなくともアル・パチーノの言葉でアメリカの背景が手に取るようにわかる凄さがあり、映画史に残る名作かと思う。その後の展開がまたいい。
最後に学校で政治学か何かを教えている女性教師が“中佐、中佐!”と追いかけてきて、ぜひ、お話を聞かせてほしいと懇願した際にその女性教師の香りから“岸辺の花“という香水名を言い当てる。
あのシーンは何となく、ベアード校に通う学生の岸辺の花になりそうな女性教師の出現でかれの人生に何とも言えない希望のような期待を抱かせて映画が終わる。その終わりは少し前の壮絶なスピーチのシーンから想像もつかない展開で、盲目の将校のその後の幸せを見事に予期させる物語の妙を教えられたような素晴らしい映画であった。
2025年7月14日T>I