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Column

奇 遇

 奇遇というこのタイトルで言いたいことは「不思議な縁で巡り会うこと」なのだが、この場合もそんなことかもしれない。
 先日の京都旅行の際、その日、私は重森三玲庭園美術館を見学することで出かけた。場所は吉田神社の近くだったのでそれとセットで出かけることになったのであった。私たちは旅行案内書と照らし合わせながら、庭園美術館をめざして行ったのだがそこにたどり着くことができない。地図に合わせて相当歩いたが?到達しない。
 この地では3つの場所をセットで観ることができる。1.京都大学 2,吉田神社、3.重森三玲庭園美術館の3つである。
 1番2番何なくクリアできたが、いくら歩いても3番に到達しない。こんなはずではない!
と思い始めると、これはだれかに聞かないと始まらないと思い始めた。運よくそこには京都大学関連施設が多く、聞く人に苦労することはない。と言って思い始めたが聞く人があまり多いのも困ったのであった。昼の授業が終わったのか京都大学の学生がしこたまいるのである。今度はその中でだれを選ぶかを考えると?これはこれで面倒なものである。
 女性がいいのか?男性がいいのか?出来たら親切そうな人がイイ…などと思いながら歩く、これはこれで困ったことになって、面倒になり目の前にたまたまいた男子学生に地図を示しながら
“この重森三玲庭園美術館に行きたいのですが?”と聞くと彼は地図を見ながら自分のスマホでそこを調べ始めた。しばし無言でいくつかのサイトを検索しながら調べると、
“案内します!”と言った。どうも面倒な場所らしい。後でわかったことだが私は相当勘違いしていたらしい。それを知って、申し訳ないと詫びた。
彼は“いいんです、暇ですから・・・”といって先に歩き始めた。そして、自分のスマホを確認しながら歩き始めた。でも・・・暇と言っても面倒なはずだ。もしかすると大学の方針として観光客には親切にするようにというような方針があるのかもしれない・・・?などと思いながら彼の後を付き従うと、なんともとこれまで来た道に戻っていくのである。少し歩くと遠くに吉田神社の赤い鳥居が見えてきた。私の見た地図は何なのだと思い始めて親切な学生の後をついていくと。
“ここです!”ということになったその間30分くらい歩いたのではないか?どこでどう間違えたのか?
“今日は閉館のようですね?ここにそう書いてあります。”
“今度来るときは事前に電話でもして確認してこよう・・・”私はそう言って学生にお礼をすることになった。家内が財布を漁ったが生憎、千円札が切れていた。彼女は一瞬躊躇したが礼としては少々多いがその親切な学生に5千円を差し上げる決断をして差し出した。
学生はその額の多さに躊躇したが、私は午前中のスマホトラブルで24,000円支払ったことに比べたらこの親切は安いものだと思った。学生は恐縮しながら“こんなにたくさんは・・・”
と言いながら受け取ってくれた。この予期せぬ散財はまったく当然と思ったのは午前中の詐欺まがいの出費に比べると格安に感じたからである。彼はその後、われわれをバス停留所まで送ってくれて、何台かのバスの後に確実にホテルに到達するバスに乗り込むまで、見送ってくれた。お互いにバスの中から手を振って別れたが、その件で午前中のいやな体験を払拭してくれたことに比べれば安いくらいだねと家内と話し合った。私は帰り際に礼状を書くので住所を書いてくれないかとお願いした。京都大学の法学部に在籍している彼は“法曹“関係に進み、今年の11月に大学院入試・・という特別な俊英だったのである。

 昨日、彼から小さな荷物と手紙が届いた。そこには京都大学で販売している名物の“総長カレー”と“京大飴”が入っていた。手紙には“いただいた5千円で万年筆を買いましたと書いてあった。勉強の必需品を買ったのだ。私はその手紙に何ともジョージ・ギシングの小説でも読んでいる気がした。袖すり合うのも多生の縁というが‥‥不思議で爽やかな縁であった。
                                  2025601

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