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Column

プルメリアが咲いた

 プルメリアという花の名前はハワイのカハラホテルに行かなければ一生知ることもなかったのだろうと思う。カハラホテルの海に面したレストランの名前がプルメリアであり、そのレストランの前をプルメリアの生け垣が覆っていたのである。ここでとる朝食は忘れがたいものだ、朝日が燦燦と降りそそぐ中で目の前は何ら遮るものがない大海原。一流のホテルの朝食ならではの演出としてこれ以上のものはないだろう。
 多くの日本人はハワイが大好きだが私はそうではなかった。なぜ嫌いかというとあのワイキキのごみごみした何となく日本の海の家と海水浴場に通じるあの猥雑な景色が耐えられなかったのである。しかしあれがイイと言うヒトも多いのかもしれないが。同じ海外旅行でお金を使うのだったらもう少し奮発してヨーロッパの方がいいというのが私の考えである。しかしそうは言っても妻と娘はハワイにこだわった。ということでハワイに行くことになったのだが、それなら、もっとハワイらしい?というより南海の孤島らしい感じが堪能できるローケ―ションに建つホテルということで物色した。正直に言うと私は旅行先よりそこのホテルが良ければ場所などは多分にどこでもよいというタイプなのである。
 しかし、カハラホテルに決めた頃はネットで調べるという便利さはなかったのでお決まりの旅行案内書で調べた。旅行案内書でいいホテルを探すとなるとこちらのイマジネーションが決め手になる。というのは消しゴム代の写真からそのホテルの魅力を引き出すのは至難の業だからである。私がカハラホテルを選択したのは何のことはない天皇ご夫妻が滞在したホテルという最もクラシックな理由からである。天皇が泊まるホテルなら超一流に違いない!いわゆる宮内庁御用達ホテルである。英国ならさしずめワラントマークを獲得しているホテルなのである。
 それは裏切られることはなかった。私がイメージしたホテルであった。8階にあったその部屋は水平線がどこまでも続く海と山側にある住宅群が見渡せる素晴らしい眺望を持っていた。涼やかな風が心地よいベランダでマイタイを飲みながら、葉巻を楽しむ極上感はこれだけで何十万円支払う価値はあるなと思ってしまう。とはいってもアメリカではこの喫煙方法は違反で見つかると罰金を取られるかもしれないので実際は恐る恐るなのだが、この極上感には代えがたい。
 とそんなハワイのいい思い出が思い出されるのがプルメリアなのだが、イトーヨーカ堂の花屋でそのプルメリアの鉢植えを昨年見つけて購入した。買うにあたって店員さんに“ところでプルメリアの花は咲くものですかね?”と尋ねると“さあー?咲いたのを見たことがありません”・・・でも、買っちゃったし、この葉っぱだけでもいいか?と思いながら家に持ち帰る。やがて秋が来た。やがて、葉もすべて落ちてしまい何とも一本の木だけになってしまった。直立している一本の木というのも何とも説明のつかない風情なのである。このまま、外に置いておいてはダメになるかもしれないなと思った。我が家にはプルメリアより先にクロトンという同じハワイに群生している観葉植物をその一年前に買った。これは家人が大事にしていた。したがって、寒くなると必ず部屋に入れるようにしていたので同じハワイのある植物なのでこの二つのただ枝だけの鉢植えを部屋に入れることにした。
 やがて春が来て暖かくなったのでその二つの鉢植えは日に当たることになった。我が家はだいたい午後二時くらいまでは陽光が当たっている。ともかく花が咲くぐらいの太陽は確保できているはずだ。そのうえ、今年の暑さはハワイを超えたとんでもない暑さであった。これが我が家のミニハワイには良かったらしい。この二つは水を得た魚ならぬ太陽を得た植物。ぐんぐん伸びて、葉は大きく青々と茂ってきた。期待してカプセルの栄養液を与えたのも功を奏したのかもしれない。まず枝は伸び、大きな葉をつけた。まず、南洋の植物というのは葉が大きい。そうこうしているうちに少々変わった枝が出てきた。これからどんな展開になるのか分からなかった。日本にある他の植物とは違った発達の仕方をするようである。
 その先端にあるものが蕾であることが分かるまでかなりの時間を要したかもしれない。もしかしたらプルメリアが咲くのかな?期待と疑念が交錯する日を何日か送った。その間35度を何回か記録する日が続いた。そのうちに一つが大きくなって間違いなくプルメリアの花であることが分かってきた。咲くんだ・・・・?





真っ白なプルメリアの花を想像していたが微妙なピンクと黄色がグラディエーションしているプルメリア。正直、日本で見たのは初めてである。香りはあの甘い匂いがするではないか。また、それ以上に葉が美しい、凄くかたい葉で葉脈もくっきりと出ていてこれも美しい。蕾は10個くらいあったが今日3つ目の花が咲いた。もし、暖かく、陽光があれば残りの蕾が咲くだろう。今年は秋が早いというが残りの蕾のためにはもう少し暖かくあってほしい。そして、後は冬に葉を落とさないように工夫をすることだ。ハワイでは一年中花が咲いているような気がするからだ。

泉利治

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