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Column

読書家

 小学校の時、ある担任の先生からの通信簿に“長文の本などを読ませる習慣を身に付けさせたいものです”と書かれたことを母から聞いたが。そう考えるとほとんど本などを読む子ではなかった。だいたい、そんな子のほとんどはどんな本を読んでいいのかわからないからである。親が読書家であるならば何らかの指導があったのかもしれないが?
 高校に入った時、ある国語の先生が勉強をするには勉強をする場づくりが大事だという話をしてくれた。その場とは机の脇に本棚を置いて、そこにありったけの本を並べるといい!ということを話してくれた。なるほどと思った私はそのころから本を身近に置くのが趣味になった。そして、確かなことはその隣にある机に向かうようになった。そして現在がある気がしないではない。しかし80歳が近い身であると本を買うことは少なくなった。というのは置き場所がなくなりつつあるからだ。
 とは言っても物語を執筆していると本が必要である。パソコンからの情報ではやはり限界がある。そこで解決案は市立の図書館から本を借りてくることにした。鎌倉市立図書館は市内に数か所あり、電話で注文すれば近い図書館まで一日で中央図書館から身近な図書館に持ってきてくれる。
 この本のほとんどが今執筆している物語の資料である。今借りている本は「室町時代の一皇族の生涯」「呪術と占星の戦国史」「戦国時代は何を残したのか」戦国武将の肖像画」最後に「幼いイエスの聖テレーズ自叙伝」の以上は市立図書館からの借り物。これらの本は読む人がいなければ何か月も借りられるので助かる。それと「シャーロック・ホームズの原書」これは50年前に買ったもので今年から読み始めたバイブルであるが。と同時に本物のバイブルも読むようにした。これは枕元に置いてあるので眠れないときに数ページ読むと意外とすぐに眠れる。ただ、意外と理解不能な話が多い―言わんとしていることが分からないのである。それに比べると日本の本は分かりやすい。聖書が分かりにくいのを回避するために日曜学校あるのだが、どこかぴったりの教会があれば正直なところ、カソリックでもプロテスタントでもいい気がするが行くのもいいかもしれないはどうだろうか?

 そんなことから滅多に本を買わないのだが一昨日、珍しい本の買い方をした。私は現在室町時代の刀剣に関する本を書いているが、40年近く前に剣道をやっていたころ、やはり刀剣に興味をもって特に真剣の名刀に興味を持った。そのさいに何冊かの刀剣に関する本を購入した。私は自分の買った本を読まなくなっても売ることをしないので今回のようなときに便利である。
 今回、その中の一冊が特に役に立つ本であった。「刀剣美術入門・日本刀の鑑定と鑑賞」という本で出版社は「金園社」と言うあらゆる分野の実用書を扱っている出版社である。どちらかと言うと一時代前の出版社である。専門書が幅を利かし、その程度のモノならNETで読むことができるので価値がないような気がしないではないが?
ところがこの刀剣書は大変な優れモノで今どきの刀剣知識の最高峰のような気がしないではない。作者の常石英明氏の刀剣に関する知識や見識は今どきの専門家の域を超えており、その知識には刀剣に生涯をかけてきた人の情熱を感じたものであった。
 一昨日、こんなことがあった。今から40年前に勝った古本の同書、今週気づいたのだがその中の鑑定の稿のところが15ページだけ切り取られていることに気づいた。第三部の日本刀の鑑定の57ページから70ページを丸ごと、カッターで切り取られているのだ。図書館にあるかを確認したがやはりあるわけはない。と言うわけで会員になっている「日本の古本屋」というサイトを開いて調べると全国の古本屋に何冊かあるのを探し昭和44年2月1日六版発行を1154円で徳島の古書店から購入した。その際に書店にその抜けたページは間違いなくありますね?と店主に電話で確認して購入したのであった。読んでみて、やはりその切取られているページは確かに内容のあるページであることが分かり、一件落着したのであるが、この本の作者の常石氏の知識や自分の目で見て、その体験を通して書いた内容は得がたいもののような気がしている。そう考えると私が持っている40年前の刀剣に関する本はどのような著者であろうと自分の目と足で集めた情報を自分の頭で考えたものを基に書いているので昨今の刀剣ブームに乗った知識とはけた違いに実態を伴っていると言っていいだろう。
 最近はネットの知識やそれを駆使し、挙句の果てはAIという、文明の鈍器を使い書いている輩がいるようだが、こうやってみると四十年前の著作者は皆、まじめで額に汗して本を書いた気がしている。そう言う私はAI時代の老人だが・・・?
                               2024年3月25日

 

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